のうめん やまんば
能の『山姥』一極に用いる専用面。山姥の山廻りの曲舞が評判の京の遊女が、善光寺参りの途中本物の山姥に会う。山姥は曲舞を所望して舞った末、本物の山廻りを見せて姿を消す。曲中、山姥は実は人を助ける山の女で、邪正一如、善悪不二であると謡う。山の神秘を表現する能で、面も鬼女と仙女の性格を併せ表している。「髪にはおどろの雪を頂き、眼の光は星のごとし」の謡いのとおり、白黒の線で白髪を表し、見開いた目には金泥を挿す。眉は黒と白の毛描きで、歯にも金泥を塗る。文禄2年(1593)10月5日、太閤秀吉の禁中能では、織田信長の次男で秀吉のお伽衆となっていた、信雄(1558-1630)が山姥を舞っており、「常真、御能比類無し。扇あつかひ殊勝殊勝。」と近衛信尹が評している(『三貘院記』)。裏面に緑青を塗った「天下一 是閑」の焼印を押す。(『NHK大河ドラマ特別展 天地人―直江兼続とその時代―』サントリー美術館ほか、2009年)
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