つぼ ぺりかん と どらごん
透明ガラスに茶褐色のガラスを厚く被せ、闘いに向けて睨みあうペリカンとドラゴンを彫り描いている。蓋付杯「アモルは黒い蝶を追う」(ガラス555-4)の素地より茶色がかっているが、〈悲しみの花瓶〉シリーズのひとつであろう。基底部には、「私は戦った J ’ai conbattu」との銘が彫られる。ペリカンはキリスト教図像学上、自愛、犠牲、献身、転じて善なる教会の象徴として表わされる。一方ドラゴンは、この場合、不遜、不敬、悪を象徴する。一見、キリスト教的なテーマに見えるが、実はペリカンの姿は北斎の化鳥(『絵本魁』)から、ドラゴンと渦巻文は、おそらく「登龍の不二」(北斎『富嶽百景』)から絵柄を切り取って転用し、西洋風のテーマへと再構成させたものである。日本美術のモティーフを見事に自国の文化に融合させた作例だが、さらに素地は中国の玉に触発されたものであり、またドラゴンの彫り出し方は、清朝ガラスの彫琢法からの影響を窺わせる。 (『ガレも愛した―清朝皇帝のガラス』、サントリー美術館、2018年)
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