きりこ うろこもん はち
透明ガラスを型に吹き込んだ後、江戸切子の技法をもって均一のうろこ紋にカットを施し、表面をマット状に仕上げた器。本作には岩田藤七氏による次のような箱書きがある。「小林菊一郎氏は上州の人十三才にて江戸切子の継承者大橋徳松の徒弟となり、猿江に住居しをりました。岩城各務保谷日陶の硝子研磨工場の設置に努力して当年六十五才になって自分の製作を伝統工芸の日本工芸会に初めて出品して最高の賞を授與され世に認められました。然る十一月三日に胃の出血にて亡りました。うろこ紋小拾個を十月末日に仕上げましたのが最後の遺作となり近世切子の名工でした。銘は博物館の岡田美術課長です。昭和三八年十二月二五日 藤七記」東京国立近代美術館には、その寸法、制作技法、制作年から考えて、本作と同じ型を使って制作されたと思われる小林の切子鉢六点が所蔵されている。また東京国立近代美術所蔵の小林菊一郎作「うろこ文切子鉢」も、大きさこそ異なるが、技法、制作年、また上記の箱書きから判断すると、本作と東京国立近代美術館蔵の六点と合わせて、遺作となった十点のうろこ紋鉢に属すると推定される。(『日本のガラス2000年―弥生から現代まで』、サントリー美術館、1999年)
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