花火 - ピアノとオーケストラのための協奏曲(2017)
現代の花火は技術の発達により、完全に爆発をコントロールする色彩と空間の芸術へと進化している。
中国出身の著名な芸術家、蔡國強の作品に触れる機会があり、彼が花火を使った、パブリックでありながらパーソナルでもあるという相反する側面を併せ持った作品に非常に強い感銘を受けた。
今作は彼のいくつかの作品からインスパイアされたものである。
花火のようにシンプルな素材の組み合わせによって成り立つ音楽は、一種のインスタレーションのようでもある。たえず更新され、ひたすら変容し、儚く散ってゆく。これらは結果、瞬間の音楽の連なりとなる。
そして、なによりも花火のようにコントロールしながらも壊れてゆく美しさ、壊れた美しさ、という極限の状態を音楽上で表現/聴取する楽しみを見出す。
ピアノソロを含むいくつかの楽器は[壊れる]ということに関連付けられるいくつかの特殊な仕掛けがしてあり、そのヴィルトゥオジティと相反して次第に壊れてゆく。
今作は7つのシーンより構成される。
以下各シーンの概要。
Scene 1 : Introduction
Scene 2 : Smoke, fog and haze
膜が形作られ、それらは変容してゆく。
Scene 3 : Burst - pt.1
膜は解体され、点或いは連続する点 へと変容する。
さまざまな方向性が提示されては消えてゆく。
Scene 4 : Incidental color
色彩によるカデンツ。爆発する瞬間をひたすらに重ねてゆく。
やがて音楽が壊れはじめる。
Scene 5 : Burst - pt.2
壊れてしまったオブジェ。
暴走をひたすらにコントロールする。
Scene 6: Embers, remembrance
壊れてしまったあと。あり得たかもしれない可能性の花火 - 残り火。
Scene 7 : Sky ladder
蔡國強 作、同名作品へのオマージュ。
花火はハシゴを形作り、ただただ空へ登り、儚く散ってゆく。
[坂東祐大]