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23.12.07
様々なフィールドで活躍するサントリーの社員=サントリアンにスポットを当て、「挑戦」をテーマにインタビューしていくシリーズ企画。第6回目は、サントリーのラグビーチーム「東京サントリーサンゴリアス(以下、サンゴリアス)」に所属しながら営業マンとしても活躍する、二刀流の「社員選手」である大越元気さんを取材しました。
南アフリカの優勝で幕を閉じたラグビーワールドカップ2023。チーム・ジャパンの奮闘は記憶に新しいところですが、サンゴリアス所属の選手たちも多く選出されました。サンゴリアスは多くの優秀な選手を輩出してきた古豪として知られていますが、その強さを支えてきたのは「社員選手」たち。そんな社員選手のひとりがスクラムハーフ(SH)の大越元気さんです。
父親がラグビー好きだったことから3歳からラグビーを始めた大越元気さん。すぐにラグビーが大好きになり、本格的に取り組んだのは小学校5年生からでした。そんな大越少年にとっての憧れのチームが、サンゴリアスだったそうです。
大越さん:子どものころは、よく父と一緒にサンゴリアスの試合を観戦しました。巧くて、強くて、カッコよくて、それにファンイベントなどで会う選手たちはとても優しかった。ですから憧れとともに、ごく自然に「このチームでプレーしたい」という気持ちが育まれていたように思います。
高校は茨城県にある強豪、茗溪(めいけい)学園へ、そして同志社大学に進学。U-20日本代表に選出されると、当時の監督はサントリー出身。将来を考え始めるようになるとサンゴリアスは「憧れ」から「目標」になっていきました。
大越さん:サンゴリアスに所属するなら、ラグビーをしながら社員として通常業務をこなす「社員選手」という形になりますが、父のサラリーマンとしての仕事に向き合う日々を見てきたからでしょうね。社員へのこだわりがありました。
大越さんのポジション、スクラムハーフの役割はフォワードとバックスをつなぐこと。いいプレーをするためには互いのコミュニケーションが不可欠ですが、フィールドを離れても“スクラムハーフ的な仕事”がありました。それがチームの考えや価値観をより深くチーム運営に反映するための選手組織「カルチャーグループ」。名前のとおり、サンゴリアスの文化を知ってもらうことを目的にしています。
大越さん:どんなチームにも明文化されていないルールがあって、それがチームの文化とムードをつくっています。
ロッカールームの清掃や、身だしなみ、選手間・スタッフとのコミュニケーションの促進など、カルチャーグループの役割は多岐にわたります。また、サントリーはお酒の会社ですので、サンゴリアスの場合はフィールド外でも酒席で守るべきマナーもある。こうしたプレー以外の部分でもチームカルチャーを醸成できればいいプレーにもつながりますからね。
現在、日本人のなかにはプロ契約を結んでいる選手も所属していますが、大越さんが入社した2017年当時、日本人は大半が社員選手でした。
大越:先輩方は練習が終わるとスーツに着替えて、颯爽と仕事に向かう。その様子がとにかくカッコよかった。ですから、私もラグビープレーヤーとしての面だけでなく、サントリーの社員として、また営業として、後輩たちに行動から何か示したいし、もし気づいてもらえることがあれば嬉しいと思っています。
7年目を迎えた大越さんは、上司とともに大型スーパーの関東本部で家庭用のワインとビールを担当しています。営業成績も上々だとのことですが、最初から順風満帆というわけにはいきませんでした。
大越さん:社会人一年目に任されたのは都内で数店舗を展開するスーパーのチェーン店様。入社から半年くらいが経ち、ラグビーも忙しくなっていた時期でした。
いま思えば「自分はラグビーもやっているから」という甘えがあったのでしょう、バイヤーさんに「キミがラグビーをやっているとか、わが社にはまったく関係がない。普通のサントリーの営業としての仕事をちゃんとやってくれ」とめちゃくちゃ怒られたんです。
以来、ラグビーを言い訳にせず、仕事と向き合うため、最初にお得意先様と会う際は「サンゴリアスのメンバーとしてラグビーをやっている」ということをあえてお伝えしたうえで、ラグビーを言い訳にできないよう「いち営業として見てほしい」ということを伝えています。
あのとき真摯に伝えてくれたバイヤーさんには感謝しかありません。社会人としての最初のお得意先様ですから、思い入れが深いですし、異動のときは一番残念がってくれました。いまも親交があるんですよ。
大越さんのそんな姿勢をもっとも認めているのが、営業でペアを組む先輩社員の若村由樹さん。「ラグビーを言い訳にせず、責任感を持って、全力で向き合う熱量に驚かされる」と話します。若村さんは、ラグビーへの理解が深く、また応援してくれる存在です。
大越さん:若村さんからは、資料の作り方やお得意先様との接し方など、多くのことを学ばせてもらっています。ペアを組んだとき、「元気くんにとって、一番大切なのはラグビー。まずラグビーに集中できる環境をつくって」と言っていただいて、しかも私とペアを組むことで仕事の負荷は増えているのにもかかわらず、「ラグビーに集中して」とバックアップいただけています。
仕事とラグビーという異なる性格のコミュニティをもっているからこそ、さまざまな効果があるそうです。そのひとつが気分転換。
大越さん:午前中の練習で失敗して、重い気持ちを引きずって出社しても、会社でいい話が聞けて気持ちが晴れたり、逆に会社でのネガティブなことが練習で解消されることもある。また普通に出社したり、練習場へ行くだけでもスイッチが切り替わるんです。
性格の違うふたつのコミュニティがあることは、会社員として、選手としてモチベーションを保つことができるし、一方だけでは逃げ場がなくなってしまったかもしれません。ただ、それはラグビー選手でいる自分を応援してくれるサントリーだからこそ得られるモノだとも感じています。
サントリーの創業者である鳥井信治郎の言葉「やってみなはれ」から来るサントリーの価値観は、チャレンジする人をサポートしていこうという気風になって現れているようです。
大越さん:サントリーという会社には喜怒哀楽すべてが詰まってますね。学生のときは、仕事で本気で喜んだり、心から反省したり、試合に出られずに悔しいなんていう経験はできないと思っていました。
ですから、いま改めて自分を取り巻く環境が嬉しいし、まるで第二の青春(笑)。だからこそサントリーという会社のため、サンゴリアスというチームのため、自分ができることを探し、アプローチしていこうという気持ちに自然になれるんです。
「やってみなはれ」の精神はサンゴリアスのプレーに表れていると大越さん。
大越さん:サンゴリアスは「アグレッシブ・アタッキング・ラグビー」を継承してきました。これはリスクを恐れずに、あらゆるシーンでボールを動かし続け、得点するためにチャレンジすることを目指すもの。ボールに触れるシーンが増えれば、落としたり、インターセプトされたり、リスクも増えます。ですがそのリスクを冒してもトライを目指すのは、「やってみなはれ」の精神そのものなんです。
社員選手が多く所属するサンゴリアスには、ラグビーの「ラ」と業務の「業」からつくられた「ラ業両立」という言葉があります。
大越さん:先輩たちは当たり前に使っていたし、それが大事だと教わってきました。ですから、ラ業どちらも100%、100%でやっていくことはこれからの“私の当たり前”です。
100%にするために必要なのは時間の質を上げること。
大越さん:業務面での課題は多いですね。ラグビーをしている分、どうしても同期の営業と比べたら経験値が圧倒的に少ない。ただそれをハンデだと思わず、時間の質を上げることで追いついていきたいと考えています。サントリーにはさまざまなプログラムが整っているので、経験不足を勉強で補うことも含めて、自分に足りない部分をもう一度、検証したいですね。
一方、ラグビー選手としての目標は「一試合でも多く出場すること」。大越さんのポジションのスクラムハーフには、「ラグビーワールドカップ2023」の代表選手である流大(ながれ・ゆたか)選手と齋藤直人選手がおり、チーム内での戦いも厳しいものがあります。
大越さん:代表が素晴らしい選手たちであることは言わずもがなですが、僕ら若手も含めて新しいスタイルを構築すべく、ハードなトレーニングをしてきました。ですから、我々としては「ワールドカップメンバーでも簡単に出られるようなチームじゃない」ということをアピールしたいですね。
12月9日、「NTT ジャパンラグビー リーグワン2023-24」が開幕します。海外からもワールドカップ参戦選手が加入することが決まり、期待は膨らみます。サンゴリアスの初戦は12月10日、秩父宮ラグビー場で行われます。相手は昨年、初優勝を果たした「クボタスピアーズ船橋・東京ベイ」です。
大越さん:選手もスタッフも一丸となって、総力戦で戦っていきます。サンゴリアスにはいい選手がたくさんいますので、選手にも注目いただきたいですね。
サントリー株式会社
首都圏統括支社 広域営業部
大越元気┃おおこし・げんき
1994年生まれ、東京都出身。ジュニア・ジャパン、高校日本代表、U20日本代表とラグビーの代表チームに選抜され、同志社大学卒業後、2017年にサントリーホールディングス株式会社に入社。「東京サントリーサンゴリアス」に選手として在籍しながら、営業担当として大型スーパーの関東本部で家庭用のワインとビールを担当。入部・入社から6年、ラガーマンとして、営業マンとして活躍する「社員選手」のひとり。