箸やすめコラム
ここ数年、アウトドアやキャンプ飯ブームも相まってにわかに注目を集めている燻製料理。食欲をそそる芳ばしい香りは、ビールなどのお酒のアテにもぴったり!
今回は自宅のキッチンで手軽にできる燻製おつまみのつくり方・楽しみ方を、家族でアウトドアライフに親しむ寒川さん一家に教えていただきました。
※感染対策を徹底した上でインタビュー・撮影を実施しています。
煙でいぶすことで食材に芳ばしい香りをまとわせる燻製料理。そもそもは肉や魚を保存食にするための調理法で、下ごしらえや長時間いぶすことが必要ですが、最近はその風味を楽しむ簡易的な燻製が広く浸透しています。とはいえ、初心者が挑戦するには「準備も後片付けも大変そう」と、敷居が高く感じるかもしれません。
「実は意外と簡単なんですよ。特に最近は、アウトドアでもキッチンでもほかのお鍋と同じような感覚で使えるコンパクトな燻製器がたくさん登場しているので、ぜひ使ってみてほしいですね」
そう教えてくれたのは、北欧ソト料理家でアウトドアブランドの輸入商社・UPIのアドバイザーとしても活動する寒川せつこさん。夫の一(はじめ)さんと共に、長年北欧を中心とした国内外のアウトドアライフやカルチャーに親しんできました。
「わが家でよく燻製にするのは、ウインナーやベーコン、ちくわやかまぼこ、チーズ、ナッツ。短時間で風味づけするだけなので、基本は火を通さずそのまま食べられる食材を使います。前日余った白身のお刺身なんかも、燻製にするとひと味違ってとてもおいしいですよ。ただ、野菜など水分が多い食材はあまり燻製には向いていません」(せつこさん)
ということで、ここからは寒川さんが普段から愛用している、キッチンのガスコンロやIHクッキングヒーターでも使えるステンレス製の小型燻製器を使って、ご一家の好物である生の殻付きエビを燻製にする手順を見せていただきました。
まず、燻製機の底に香りの素となるウッドチップをひと握りほど入れ、ふたを締めて中火にかけます。1分ほどで燻製機のすき間からほそーい煙が出てきたら、一旦火からはずし、ふたを開けて塩とレモンで下味をつけておいたエビを重ならないように手早く並べます。ふたを締め、弱火で5分ほど加熱したあと火からおろし、香りを安定させるためにふたを締めたまま10分ほど置いたら、完成。
燻製にかかった時間は正味20分。煙もほんのわずかで、想像以上に簡単な手順に驚きです。
そして、この燻製にしたエビを使って、娘の奏(かなで)さんが色あざやかなトルティーヤをつくってくれました。
「燻製にしたエビって茹でたものより色が濃いような気がして、食欲そそりますよね〜。そのままでももちろんおいしいけど、今日はスライスしたアボカド、パイナップルのサルサソース、チリフレーク、ディル、最後にライムをキュッと絞って、見た目にもきれいで夏を感じるトルティーヤにしてみました。これ、絶対にビールや金麦とも合うはず!」(奏さん)
さて、完成した燻製おつまみをアテに、寒川家の「金麦晩酌」がはじまりました! ちょっと覗き見させていただきながら、それぞれに晩酌についてうかがってみましょう。
「わが家で金麦晩酌をするなら、やっぱり庭で外の風を感じながら楽しみたいですね。僕らが長く触れてきた北欧圏のアウトドアカルチャーは、日常の延長線上にあるもの。自宅の庭や歩いて行ける自然の中にトナカイの敷物をさっと敷いて、火を囲み、家族や友人と集まって食事を囲むのが定番です。日本のピクニックと似てますよね」(一さん)
「特に夏は庭で晩酌するのが気持ちいいよね。お、やっぱり燻製のエビはうま味が凝縮してて、口当たりがとろっとなめらかでおいしい! 金麦が進む〜」(奏さん)
「おつまみにほんのひと手間かけるだけできっと晩酌の新たな楽しみが広がると思います。私のモットーは『料理は実験!』。みなさんも失敗を恐れず、まずはそのままでも食べられる食材からスタートして、いろんな食材の燻製を試してみてください」(せつこさん)
スモークの香りが食材のひと味違ったおいしさを引き出してくれる燻製は、日々の晩酌をより豊かにしてくれるはず。この夏、爽やかに仕立てた「金麦」と共に、ふだんよりちょっとだけ特別な晩酌タイムを楽しんでみませんか。
「自転車のメンテナンス」(一さん)
14歳でハマって以来、自転車を愛してやまない一さん。年代物のヨーロッパの自転車を部屋でメンテナンスしながら1杯やるのが至福の時間。
「相模湾のしらす」(せつこさん)
長年親交のある秋谷漁港の網元で買うしらすは、ふかふかの食感と絶妙な塩加減でいつ食べても飽きない味。おかみさんリスペクト!
「スケッチブック」(奏さん)
家でも外でも、晩酌の傍らにはスケッチブックが欠かせないという奏さん。その時観ていた映画や人物などを無意識にするすると描く。