箸やすめコラム
川﨑万里MARI KAWASAKI
フードスタイリスト。雑誌、広告、webなどの媒体で器やテーブルウェアを中心とした食のスタイリングを手掛ける。このほかに、調理、メニューの提案、飲食店のプロデュースなど幅広いフィールドで活躍するかたわら、東京・赤坂でお酒と手作り創作料理の店「箱庭」を経営。農家直送の野菜を中心とした旬の食材で作るオリジナルの小皿料理はお酒のアテにぴったり。
http://marikawasaki.jp
秋から冬へと移り変わろうとしているこの時期。冷たい風が肌に染みる……そんな日の晩ごはんには、味わい豊かに仕立てた「冬の金麦」と相性抜群のお鍋が恋しくなります。
そこで、この冬おすすめなのが、金麦と楽しむ「チ金麦鍋」!
お好きな鍋にチキンラーメンを入れて楽しむメニューです。国産チキン100%のスープで味つけした香ばしいロースト麺は、お鍋にぴったり。手軽に使える上、どんなタイプのお鍋にもなじみやすいと、SNSでじわじわと評判を呼んでいます。
そして、チキンラーメンといえば真ん中のくぼみにたまごを落として楽しむのが定番ですが、たまご以外に “たまごポケット”に入れることで、遊び心とおいしさを両立する食材を探してみよう!ということで、今回は「チ金麦鍋」のさらなるおいしさを求めて、フードスタイリストで飲食店「箱庭」店主の川﨑万里さんに、アイデアを教えていただきました。
さて、たまごポケットにどんな食材を入れると、見た目も味もぐぐっとアップできるのでしょう?
最初に川﨑さんが教えてくれたのは、酸味を効かせたアジアン風アレンジ。ベトナム料理の“フォー”のようなイメージで、食材を組み合わせていきます。
「お鍋の出汁はチキンラーメンに含まれるうま味たっぷりの鶏ガラスープ。そこに、具材の鶏肉や野菜の出汁が加わると、マイルドでやさしい味わいになります。そして、たまごポケットに入れるのは、スイートチリソースで和えたたっぷりのパクチー。仕上げに輪切りのライムを加えれば、さわやかな酸味の効いたアジアンなお鍋が楽しめます」(川﨑さん)
ライムの酸味でさっぱりと味わえながら、鶏のうま味もしっかり堪能できる異国情緒あふれるアレンジメニュー。野菜もたっぷり味わえるヘルシーな一品です。
続いてのアレンジは、たまごポケットになんとビターチョコレートを投入するもの! 一見驚きの組み合わせですが、カカオの苦みを持つチョコレートは、スパイスや隠し味として料理に用いられることも多いといいます。
「チョコレートは肉料理やカレーの隠し味として相性がいいので、カレーベースのすき焼き風鍋に、チキンラーメンとチョコレートを組み合わせました。使用するチョコレートは、カカオ成分が70%以上のハイカカオタイプ。キリッとスパイシーなカレーベースにカカオの香りとほろ苦さが効いた、大人の味わいです」(川﨑さん)
最後は、定番人気のキムチ鍋にピーナッツバターを加えた、香ばしい風味とコクのある味わいがやみつきになる坦々風アレンジです。
「坦々風の味つけは通常練りゴマを使いますが、今回はより身近なピーナッツバターで作りました。ポイントは、ピーナッツの割合の高いピーナッツバター※を使うこと。キムチや具材の野菜から出るうま味・辛みにピーナッツバターのコクと甘みが加わると、マイルドで深みのある味わいになります」(川﨑さん)
濃厚なスープはチキンラーメンともよくからみ、食欲をそそります! 前半はキムチ鍋、後半は坦々風と、途中で味を変化させながら楽しむのにもよさそうです。
アジアン、スパイシー、中華と、それぞれまったく異なる味わいの「チ金麦鍋」アレンジを披露してくれた川﨑さん。実は、川﨑さんのお店にも“土鍋チキンラーメン”という常連さんに人気のメニューがあるんだそう。
「今回、普段とは違う個性的なアレンジに挑戦して感じたのは、チキンラーメンが意外とどんな鍋にも合うんだなあということ。もともとのうま味や塩気が、お鍋の定番具材であるキャベツや白菜、キノコ類から染み出す甘みや、アクセントに加えた柑橘・トマトなどの酸味と混ざり合うと、マイルドで深みのある味わいになります。甘み・塩味・酸味のバランスを見ながら、ぜひ新しい味に挑戦してみてください」(川﨑さん)
さあ、本格的な寒さの到来に備えて、この冬はキーンと冷えた金麦とアツアツの「チ金麦鍋」で、心も体もあたたまっていきましょう!
◯アジアン鶏チ金麦鍋
〈材料〉
鶏むね肉…150g、玉ねぎ…1/2個、サニーレタス…適量、えのき…1/2袋、パクチー…適量、もやし…1/2袋、チキンラーメン…1袋、ナンプラー…小さじ1、スイートチリソース…適量、ライム…1/2個、水…600ml
〈つくり方〉
① 鶏肉はそぎ切りにして、ナンプラーと水大さじ2(分量外)を揉みこむ。玉ねぎは繊維を断ち切る方向に薄切りにし、サニーレタスは一口大にちぎり、えのきは石づきをとって1/2の長さに切ってほぐす。パクチーはザクザク刻んでスイートチリソースと和える。
② 鍋に水を入れて火にかけ、沸騰したら鶏肉、もやし、えのきを入れる。
③ 煮立ってきたら、チキンラーメン、玉ねぎ、サニーレタスを加える。鶏肉に火が通ったら火を止め、たまごポケットに①のパクチーを入れ、輪切りにしたライムを散らして完成。食べる前によく混ぜ合わせる。
◯スパイシーカレーチ金麦鍋
〈材料〉
牛肉薄切り…120g、キャベツ…1/8個、まいたけ…1/2パック、玉ねぎ…1/2個、春菊…適量、ミニトマト…4個、チキンラーメン…1袋、しょうゆ…大さじ1、ビターチョコレート(※カカオ成分70%以上のもの)…15〜20g、カレー粉…大さじ2、水…600ml
〈つくり方〉
① 牛肉にしょうゆを揉みこむ。チョコレートは程よい大きさに割る。キャベツ、牛肉は一口大に、玉ねぎは5mm厚さに、春菊は3cm長さに切っておく。まいたけは石づきをとって小房に分ける。
② 鍋に水とカレー粉を入れて火にかけ、沸騰したらキャベツと玉ねぎを入れる。しんなりしてきたらチキンラーメン、牛肉、まいたけ、春菊、ミニトマトを入れる。
③ 1〜2分煮たら火を止めて、たまごポケットにチョコレートを入れて完成。食べる前によく混ぜ合わせる。
◯担々風キムチ金麦鍋
〈材料〉
豚ひき肉…150g、白菜…2枚(200g)、ニラ…1/2束、木綿豆腐…1/2丁、しめじ…1/2パック、キムチ…120g、チキンラーメン…1袋、ごま油…大さじ1、塩…小さじ1/2、ピーナッツバター※…大盛り大さじ1、水…600ml
※アメリカでは原材料90%以上がピーナッツのもののみを「ピーナッツバター」と定義しています。日本の「ピーナッツクリーム」は、水あめや乳化剤などの副原料が多く料理には適しません。副原料を使っていない甘さ控えめの「ピーナッツバター」がおすすめです。
〈つくり方〉
① 白菜はひと口大に、ニラは3cm長さに、豆腐は6等分に切り、しめじは石づきを切って小房に分けておく。
② 鍋にごま油をひき、豚ひき肉に塩をふって炒める。
③ 鍋に水を加え、白菜を加える。しんなりしたらチキンラーメン、ニラ、しめじ、キムチ、豆腐を加える。
④ 1〜2分煮たら火を止めて、たまごポケットにピーナッツバターを入れて完成。食べる前によく混ぜ合わせる。