箸やすめコラム
藤原 ヒロユキHIROYUKI FUJIWARA
ビアジャーナリスト/イラストレーター。日本ビアジャーナリスト協会代表。1958年大阪生まれ。大阪教育大学卒業後、中学教員を経てイラストレーターに。ビールを中心とした食文化に造詣が深く、各種メディアで活躍中。ビールに関する資格を各種取得、ワールドビアカップをはじめ国際ビアコンテストの審査員を務める。著書「知識ゼロからのビール入門」(幻冬舎刊)は、台湾でも翻訳・出版されたベストセラー。近著『BEER HAND BOOK』(ステレオサウンド刊)『ビールはゆっくり飲みなさい』(日経出版社)
ワイワイ飲んでもよし、食事と一緒に楽しんでもよし、
しみじみ味わってもよし。
ビール類はあらゆるシーンに似合うお酒です。
ところで、どんなふうに飲んでいますか?
「私は新幹線で飲むときも必ずグラスに注いで飲みます!」
と、ビアジャーナリストでイラストレーターの藤原ヒロユキさん。
ビールの素晴らしさやおいしさを広く伝えていくために
さまざまなメディアで活躍しています。
「ビール類は、まず液色や泡の立ち方などを視覚で、
次に香りを嗅覚で、そして風味やのどごしなどを味覚で……と、
人間のさまざまな感覚を使って味わうものです。
グラスに注ぐことで、それらがぐっと強調されるので、
ぜひグラスで飲んでいただきたいですね」
そこで今回は、ビール類をもっと楽しむグラス選びについて、
藤原さんに教えていただきます。
一口にビール類といっても、
たくさんの種類があり、それぞれに個性があります。
それを引き出すのがグラスだと言います。
基本的には厚手のものより薄いグラスのほうが、
口に当たった感触が繊細で、
嗅覚や味覚のじゃまをしないので、おすすめだそう。
「形はビール類の個性に合わせて選ぶことが大切。たとえば、
縁の閉じた丸いボウル状のグラスは香りをこもらせますから、
複雑な香りのものが合いますし、
逆に穏やかな香りのものや華やかに香るようなものは、
グラスの縁が開いているものがよいでしょう。
そして、のどごしを楽しむものなら、
傾けるとすっとまっすぐ喉まで流れ込んでくる
フルート型のような細いグラス。
口径の大きなグラスはたっぷり流れ込んで口の中に広がるので、
甘みや酸味、旨味などをしっかり感じることができます」
それならば、いつもの一杯もグラスを変えて飲んでみると
おいしさが変わるのでは……?
「グラスを変えても飲み物の性質が変化するわけではありませんが、
飲む人の感じ方が変わります。
だから、グラスを変えると違ったおいしさを感じられるんです」
と藤原さん。たとえば、金麦。
味も香りもしっかりとしていると藤原さんは評価します。
それを藤原さんならどのように楽しむのでしょうか?
「たとえば、食事の始まりにはタンブラーで飲みたいですね。
まずは炭酸の刺激やのどごしを楽しみながら、
さっぱりしたおかずとともに金麦らしい旨味も味わえます。
食事も後半になっていくと、味の濃いものや肉類に箸が進み、
飲むペースもゆっくりになってきます。
そうなったらグラスをチューリップ型に変えてみたいですね。
香りがグラスの中にこもってから広がるので、
金麦のアロマホップの豊かな香りを楽しみながら飲めると思いますよ」
なるほど、食事の流れや気分に合わせてグラスを変えて、
金麦の個性をじっくり味わってみるのもよいですね。
そして、これからはだんだんと季節は秋へと移り変わり
アンバータイプのビール類が似合う季節がやってきます。
「液色が濃いということは、
ローストした麦芽を使っているということ。
その香ばしさやカラメル感を楽しまない手はありません」
そのためには、やはりグラスにこだわりたいもの。
藤原さんがおすすめするのは、
1缶350mlを全部入れても上部に余裕があるくらいの
大きめのチューリップ型グラスです。
「飲む時に鼻までしっかりグラスの中に入るので、
香りを楽しむことができます。
また、そのたっぷりの一杯を飲みながら
変化を味わうこともできます。
温度が上がれば香りが立ちますし、
炭酸の刺激が穏やかになれば、旨味も一層感じられます。
そんなふうにゆっくりと楽しめるのは、
アンバータイプのビールや発泡酒ならではなのです」
ビール類の楽しみ方を広げてくれるグラス。
適したグラスを選ぶには、飲むものの個性を理解すること。
ウェブサイトなどで特徴がきちんと説明されていますから、
まずはそれに注意を払ってみることも大切です。
「グラスを変えるとまず一番わかりやすいのは香りです。
ですから、グラスへのこだわりの手始めには、
タンブラーとチューリップ型のグラスを
揃えるのがよいかもしれませんね。
その2種を使って飲み物の個性を味わってみてください」
※この記事は2018年9月に掲載されたものを編集して再掲しております。プロフィールは初掲載当時のものです。