箸やすめコラム
来客やパーティーのシーズンは、みんなに喜んでもらえるお料理を手軽につくれたら嬉しいですよね。
そんな時に丸ごと料理はいかがでしょう。
2020年01月09日
フードスタイリストマロンMARON
フードスタイリスト。大阪あべの辻調理師専門学校を首席で卒業し、料理研究家、インテリアスタイリストのアシスタントを経験後、1983年に日本でのフードスタイリスト第1号として独立。ハイセンスな「魅せる」スタイリングと、食の魅力を伝える軽やかなトークで雑誌、テレビ、ラジオなど多くのメディアや、イベント・講演会など、ダイナミックに活躍。オンリーワンな食のエンターティナーとして日々進化中。毎年開催される自身のステージ『聖誕祭』では、定評のある歌声を披露し、好評を博している。
来客やパーティーのシーズン。
みんなに喜んでもらえるお料理を手軽につくれたらうれしいですよね。
そんなときに丸ごと料理はいかがでしょう。
気負わなくても上手にできるコツをお届けします。
家族や友人たちが集う季節。
みんなで囲む食卓にどんな料理をのせよう……
と考えるのは愉しいもの。
できれば見た目が華やかでみんなが喜んでくれるもの、そしてなにより簡単につくれる料理がよいですよね。
そんなおもてなし料理といえば……?
「外国の映画やドラマなんかで、お肉丸ごとの大皿料理がどーんと食卓の真ん中に登場して、みんなでそれを取り分けるシーン、見たことあるでしょう。
あれはやっぱりあこがれの食卓のひとつ!
でも、あんな大きな肉料理を家で上手に仕上げるのは難しいですよね」
と、料理からスタイリングまでを手がけるフードスタイリストの草分けとして第一線で活躍してきたマロンさん。
マロンさんのつくる料理は、おいしそうな彩りにあふれ、おもてなしや大勢で囲むテーブルにもぴったりです。
そこで今回はマロンさんに、丸ごと料理のコツを、つくりながら教えてもらいます。
「大きな肉料理でも、簡単にできて、失敗しないコツがちゃーんとあります。
コツを覚えて、料理は愉しく!じゃ、はじめましょう」
1. 大きな肉の塊は半分にして、フライパンで調理!
「塊肉を調理するときは、1時間くらい前に冷蔵庫から出して、室温に戻しておくのが大事。火の入りが均一になります」
と、マロンさんが、まず取り出したのは、大きな塊の牛肉。これで、ローストビーフをつくります。
「今日のこれは500gのかたまりですが、こんな大きな肉に上手に火を通すのは難しいし、上手く仕上げるにはオーブンも必要です。
だから、半分に切っちゃうんです。そうすれば、フライパンだけで上手に火が通せて、しかも失敗しません!」
と、牛肉を繊維に沿って半分に切り分けました。
「ローストビーフは、仕上がったときに繊維を断つように、スライスするでしょう?
こうやって繊維に沿って半分にしておけば、スライスすると食べやすい大きさになるわけです」
次に登場したのは、鶏の骨つきもも肉。
こちらでは、鶏のオレンジ煮をつくります。
「骨つき肉はやっぱりおいしいし、食卓がアガるので、ホームパーティーなどでは、ぜひ骨つきを!
でも、火が通りにくいのが難点です。
食べようとしたら骨のまわりの肉が赤くてがっかり……
っていうこと、あるでしょう?
だから失敗しないで仕上げるために、これも2つに切り分けます」
包丁を入れるポイントは関節部。
骨を指で触ってヘコミのある部分です。
包丁を入れるとすっと切れます。
「そして、骨に沿って隠し包丁を入れるのも大事。
丸ごと大きなお肉にも、ちょっと包丁を入れれば、塊肉を調理する醍醐味も残しつつ、
フライパンで調理できて、上手に仕上げられます」
2. 煮るも焼くも、大事なのは火を入れすぎないこと
さて、半分にして扱いやすくなったものの、まだゴロッと大きいですから、火の入れ方がポイントです。
「鶏肉は強めの中火で最初においしい焼き目をしっかりつけたら、オレンジジュースと香味野菜を加えて煮込んでいきます。
でも、火を入れすぎるとパサパサになってしまうので、お肉は火が通ったら、一度鍋から出しましょう。
半分に切ったから、20分くらい煮れば大丈夫。
あとは、残った汁をとろっとつややかになるまで煮詰めていきます」
隠し包丁を入れたり、一度取り出したりの一手間、おいしく仕上げるためには大事ですね。
「でも、ひと手間かけたらひと手間抜いてもいいんですよ。
今日は焼肉のたれを使って味付けをお手軽にしました。
そんなふうに手間は省いてもいいけれど、手を抜いてはダメ。
『手抜き』って気持ちの問題だと思うんです。
料理はやっぱり真心だから、手を抜こうと思ってつくったものはもう料理じゃないですよね」
さて、鶏を煮込んでいる間に、牛肉に火を入れます。
「焼く直前に肉にしっかり塩を振って、表面を焼き付けます。
焼き付ける時には、肉に触らないこと!
ちょこちょこ動かすと焦げ目がつかないんです。
しっかり焦げ目をつけて、肉汁を閉じ込めましょう」
強火で片面ずつ焼き付け、全面にしっかりと焦げ色がついたら肉をフライパンから出してアルミホイルで二重に包みます。
「半分にして火を通りやすくしたので、あとは余熱で大丈夫。肉を煮るにしても焼くにしても、
火を入れすぎないのがおいしさのポイント。
ホイルで包んでしばらく置いておきます。
冷めないようにふたつくっつけておくといいわね!」
15分ほど経ってホイルを開けると、肉汁がぜんぜん出ていません!
包丁を入れると肉汁が流れ出てしまったりするのですが、それも全くありません!
「これはしっかり焼き付けて肉汁を閉じ込め、余熱で火を通したから。
ね、おいしそうに仕上がったでしょう」
3. 大皿に色・味・香りを盛り込む!
さあ、最後のポイントは「盛り付け」です。
ダイナミックな丸ごと料理をどんなふうに盛りましょうか?
「丸ごと料理は大皿にどーんと盛り込みましょう!」
確かに、大皿って、取り分ける愉しさがあり、食卓も華やぎますよね。
でも、お皿が大きくなると盛り付けが難しい……!?
「大丈夫!料理で大事なのは、色・味・香りのバランス。
料理一品をつくるときにはもちろん、一皿の中にも、この3つを盛り込めばいいんですよ」
例えば、鶏のオレンジ煮込み。ゴロンゴロンとしたモモ肉を組み合わせて立体的に盛り付けたところに、真っ赤なパプリカ入りのつややかなソースをかけます。
そして、フレッシュなオレンジの実とピール(皮)を添えて、爽やかな香りを演出しました。
「市販のジュースや焼肉のたれを使っても、こういうふうに仕上げにフレッシュなものを加えることで、味も香りもぐっとフレンチ風に格上げされるんですよ」
ローストビーフは大きめのボードに盛り付けます。
野菜の上にスライスしたお肉を乗せて立体感を出し、余ったスペースにはソースの入った器などを盛り込んでいきます。
「パンでも果物でも、何だっていいのよ。ちゃんと考えて、バランスよく色・味・香りが組み合わせていれば。
『でも、やっぱり何を盛り込んでいいかわからない……』
という人は、まず、お手本を真似すること。
センスは盗むもの、そして磨くもの。
いいなと思ったものを真似してやってみれば、そのセンスがそのうち自分のものになってくるものです」
「やっぱり、大きな肉や野菜を丸ごと大胆に調理するのは料理してる感、醍醐味があって愉しいわよね」
と、止まらぬトークの間にもテキパキ料理は進み、もう1品、種もヘタも丸ごと料理した「ピーマンの丸ごとアヒージョ」も完成。
「最初にピーマンにフライパンで焦げ目をつけてから、シーフードと一緒にじっくりオイル煮しただけ。
種も食べられますよ。
これはフライパンごとテーブルに運びましょう」
丸ごと料理はコツさえつかめば、失敗知らず。
ダイナミックかつ愉しい仕上がりに、みんなの歓声が上がること間違いなしです。
「最初に、料理は愉しく! と言いましたけど、そんなふうに食べる人の喜ぶ顔を見るのが、
僕が『料理は愉しい!』と思う瞬間なんです」
料理の醍醐味を味わいながら、テーブルが華やぎ、食べる人が愉しいから、つくる人も愉しい。
それが、丸ごと料理の魅力なのかもしれません。
「今日紹介した失敗しないコツをふまえて、ぜひつくって愉しい、食べて愉しい時間を過ごしてくださいね」