箸やすめコラム
お得だったのでたくさん買った野菜や、冷蔵庫に残った半端野菜も全部おいしく食べきりたい。
だから、野菜の保存食をつくってみませんか?
野菜のおいしさを引き立てて、日々のお料理の幅をぐっと広げてくれますよ。
生で食べてもおいしいし、火を通してもおいしい。
野菜は種類も食べ方もいろいろです。
今回は、保存食という方法で、おいしく野菜を食べきるコツを料理家のスズキエミさんに教えてもらいます。
スズキさんは、ご実家が農家。収穫した野菜を余すことなく食べきるための保存食づくりは、当たり前に日常の風景の中にあったそうです。
「保存食は、2週間以上保存がきくようにつくります。
少し手間がかかるものもありますが、保存食に加工してしまうことで、食べる時の調理は簡単になりますから、日々のお料理自体はラクになりますよ」
それではおいしく野菜を食べきる保存食づくり、3つのポイントを教えてもらいましょう。
1. 味噌と野菜でごはんにぴったりの味に
保存食に加工する方法には、乾燥、塩蔵、加熱などがあります。
基本的には、野菜の水分を抜いて、野菜自身の旨味や甘味を凝縮したり、水分が抜けたところに調味料を入れたりするのです。
「たとえば、味噌を使った野菜の保存食。
味噌で漬け込んだ野菜は、ご飯によく合う味になります。
おすすめは、ゴボウ。
生のゴボウをそのまま味噌に漬けるだけです。
3日目くらいから食べごろになります。
冷蔵庫で約3週間は保ちます」
5日ほど浸けてあるバットの中には、水分が。
「これはゴボウから出た水分です。
ゴボウって、結構水分があるんです。びっくりですよね」
味噌漬けゴボウはそのままでも漬物のようでおいしいのですが、そのまま片栗粉をつけて揚げた唐揚げも美味。
金麦もごはんもすすみます!
野菜と味噌、それぞれの旨味が引き立てあう保存食です。
2. 干し野菜は同じ色でつくる
近年、自家製の干し野菜をつくる人も増えましたが、スズキさん曰く、干し野菜は晩秋~早春がおすすめ。
「乾燥させるには、天日だけでなく、乾燥した風も有効なんです。それに、この季節なら、湿気も少ないのでカビにくいですから」
今回、干し野菜に使った野菜は、キュウリにピーマンにズッキーニ。
冷蔵庫の中で半端に残りやすい野菜たちです。
「半端野菜で干し野菜をつくるときは、『同じ色の野菜でまとめてつくる』のがおすすめです。
同じ色の野菜を一緒に干して、調理にも混ぜて使います。
1種類の野菜でつくるより、半端野菜をまとめた方がたくさんつくれるし、同じ色で統一しておけば、料理した時もキレイですから」
同じくらいの厚さの輪切りにし、完全に乾燥するまで5~7日ほど天日に干します。賞味期限は2ヶ月ほど。
「おつまみとして、そのまま食べてもおいしいですよ。
水で戻すときには、戻しすぎに注意。
旨味が抜けてしまいます。漬けっぱなしにせず、5分くらいで様子を見てください。
調味料がよく染み、食感が愉しく、噛みしめるほどにおいしいです。
和え物やサラダにおすすめですよ」
3. 保存食でも野菜のキレイな色を愉しむ
スズキさんが野菜の保存食をつくるときには、野菜の色をなるべくキレイに残すようにしていると言います。
たとえば、ニンジンのディップ。
ニンジンそのものの鮮やかなオレンジが料理に彩りを添えます。
「ニンジンを皮ごとじっくり30~40分くらい蒸します。
するりと皮が剥けるようになるので皮を取り除き、オリーブオイルと塩で調味して、フードプロセッサーやすり鉢などでペースト状にします。
ニンジンのように硬い野菜は、加熱することで柔らかくもなるしなによりじっくり火を通せば野菜の旨味が引き出されます」
ナスは色が変わりやすいので、ちょっと手間をかけて色を残します。
「輪切りにしたナスに塩をして一晩重しをしておく。しっかり水分を絞ったら、酢と水を1:1で合わせたもので茹でて、ざるにあけます。
1日くらい干したら、オリーブオイルに浸けて保存。
色だけでなく味もしっかりついているので、パスタにサラダに大活躍します」
こうして加熱加工することで、見た目もキレイに、味もしっかり。
料理にアレンジしやすくなるのもうれしいです。
農家に育ったスズキさんにとって、保存食づくりは、野菜に触れながら旬を味わうということでもあります。
旬の時期には、比較的価格もお手頃ですから、たくさんの量を買うことができます。
だから、旬の時こそ保存食づくりです。
「みなさんにも、野菜の保存食をつくることで季節を感じ旬を愉しんでいただけると思います。そして、自分でつくった野菜の保存食が、毎日のお料理をラクに、メニューを豊かにしてくれるはずです」