Liqueur & Cocktail

スピリッツ入門 5.ラム 製法と種類

ラムの製法

ラムはサトウキビの茎を搾り煮つめて結晶化させ、砂糖を分離したあとの液(糖蜜)や搾り汁をそのまま水で薄めたものを用いる。どちらもすでに糖分が含まれているので、グレーンスピリッツ製造のような糖化工程が不要となる。糖蜜を原料にしたものをトラディショナルラム(フランス語圏ではアンデュストリエルラム/industriel/工業ラム)、または糖蜜をモラセス(英語/molasses)と呼ぶことからモラセススピリッツとも言われる。現在、ラムのほとんどはトラディショナルラムである。
これに対して搾り汁を直接使用するものはアグリコールラム(agricole/仏語/農業ラム)と言う。こちらはラム総生産量の3%程度でしかない。サトウキビが新鮮なうちにジュースにして仕込まなければならないため、収穫期にしか製造できない。
新しい取り組みとしてハイテストモラセスがある。これはサトウキビの搾り汁を加熱してシロップ化したものを原料とする。この場合、糖蜜同様に保存が効く。加熱により固形化した黒糖もこれに含まれる。
さて、製造段階での発酵法や蒸溜法の違いによりライトラム、ミディアムラム、ヘビーラムの3タイプの風味に分類されるが、主産地にひとつの傾向が見られる。ライトラムはスペインの統治下にあったキューバ、プエルトリコなど。ミディアムラムはフランス系植民地で発展し、フランスの海外県のマルティニーク島やグァドループ島など。ヘビーラムはイギリス連邦加盟国のジャマイカ、ガイアナ、トリニダード・トバゴといった国々になる。もちろんこれらの国々でも他のタイプのラムを生産している。
ライトラムの製法/糖蜜に水を加え、純粋培養した酵母を用いて発酵させ、連続式蒸溜機で蒸溜(アルコール度数は95度未満)。蒸溜液を割り水し、内面を焦がしていないホワイトオークの樽に短期間貯蔵(タンク貯蔵の場合もある)させる。最後に活性炭などの層を通して濾過する(ホワイトラム/濾過しなければゴールドラム)。
ミディアムラムの製法/ヘビーラムと同じように発酵(後述)させ、単式蒸溜器または連続式蒸溜機で蒸溜する。内側を焦がしたホワイトオーク樽(バーボン樽の場合もある)で3年未満熟成。また単にライトラムとヘビーラムをブレンドする場合もある。
へビーラムの製法/自然発酵させる場合もある。蒸溜には単式蒸溜器を使用するのが特長。 自然発酵とは糖蜜を2~3日放置しておき、酸が生成されたところでサトウキビの搾り粕(バガス)や前回の蒸溜残液(ダンダー)などを加えて発酵させること。蒸溜後、内面を焦がしたオーク樽(バーボン樽の場合もあり)で3年以上熟成させる(ダークラム)。樽貯蔵により、濃い褐色をした風味豊かなラムとなる。

ラムの基本的な製法

ラムの種類

ラムの分類には風味による分類と、色による分類の2タイプがある。

1. 風味による分類

ライトラム Light Rum/柔らかでデリケートな風味。無色透明や明るい琥珀色が多い。カクテルベースとして最適で、ラム独特の風味や香りが損なわれることがない。
ミディアムラム Medium Rum/ライトラムとヘビーラムの中間的なタイプ。ラム本来の風味と香りを持ちながら、ヘビーラムほどの強い個性はない。カクテルベースとしても使用される。
ヘビーラム Heavy Rum/最も風味豊かで、香味も強く、コクがある。色も濃い褐色をしている。ミディアムとともにお菓子づくりにも使用される。

2. 色による分類

ホワイトラム White Rum/淡色、もしくは無色のものを指す。別名、シルバーラム(Silver Rum)。カクテルベースとして最適。
ゴールドラム Gold Rum/ホワイトとダーク(後述)の中間的な色のラム。別名、アンバーラム(Amber Rum)。
ダークラム/濃褐色のラム。製菓用としての需要も高いラム。

3. その他

アネホ Anejo/オールドを意味するスペイン語。ラムを長期熟成してつくられる高級品で、香りと風味がエレガント。
スパイストラム Spiced Rum/フレーバードラムのこと。基本的にラム生産地で収穫されるフルーツやハーブ、香辛料などをラムに漬け込んだり、香りづけしたもの。一般的なラムよりもアルコール度数は低い。
カシャーサ Cachaca/ブラジルの地酒で、アグリコールラムと同様にサトウキビの搾り汁(Sugar Cane Juice)を原料とする。樽貯蔵もおこなわれている。ピンガ(Pinga)とも呼ばれるが、カシャーサ、またはカシャッサが本国では一般的。かつてのポルトガルとスペインの交易対立がいまだに色濃く残り、カシャーサはカリブのスペイン統治下だった国々のラムとは異なるという見解に立っている。
日本(サントリー)/ホワイトは活性炭処理をした、すっきりとした切れ味でカクテルベースとして最適。ゴールドはカクテルはもちろん、お菓子づくりにも利用されている。
日本(その他)/沖縄県南大東島や名護市、また鹿児島県の奄美群島などさまざまな地でラムがつくられている。奄美の黒糖焼酎は米麹を使っている以外は、ラムの製法と同じである。

ラム製品情報

5.ラム

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