Liqueur & Cocktail

スピリッツ入門 5.ラム 歴史と語源

ラムの歴史

現在、都会的で洗練された酒として親しまれているラムだが、もともとは海の男の酒のイメージが強かった。
カリブ海に浮かぶ西インド諸島で生まれたラムの原料はサトウキビ。これを持ち込んだのは新大陸を発見したコロンブスで、この地の気候とよく合い、一大生産地となる。
ラムの誕生説には二説ある。ひとつは17世紀初頭、バルバドス島に移住してきたイギリス人がサトウキビに目をつけ、蒸溜したという説。もうひとつは16世紀初頭、プエルトリコに渡ったスペインの探検家ポンセ・テ・レオンの一隊の中に蒸溜技術を持った隊員がいて、ラムを生み出したというもの。いずれにしても17世紀にはラムは存在していたようだ。その後、ジャマイカを中心に砂糖工業が発達し、それとともに糖蜜を用いる蒸溜業も盛んになっていったといわれている。そして船との関わり合いが強くなっていく。
まず航海技術の進歩とヨーロッパの植民地政策により、ラムは黒人奴隷の酷薄の歴史舞台に登場することになる。植民地史上、悪名の高い三角貿易に利用された。
西インド諸島で船に糖蜜を積み込み、アメリカのニューイングランドに運ぶ。1664年にはニューイングランドでラム蒸溜ははじまっており、ここから船でアフリカへ。ラムはアフリカで黒人の身代金となり、黒人は西インド諸島へ運ばれてさとうきび栽培の労働力となったのだ。これは奴隷貿易が廃止される1808年までつづいた。
海の男のイメージはイギリス海軍に愛された歴史にも要因がある。1740年、イギリス海軍は海兵の士気を鼓舞したり、気持ちをやわらげるためにラムを支給するが、なんと230年もの長き、1970年まで支給はつづいた。
その中で最も象徴的な伝説がある。1805年のトラファルガー海戦で戦死したネルソン提督の遺体は旗艦ヴィクトリー号の乗組員たちにより、腐敗を防ぐためにダークラムの樽に漬けてイギリス本国まで運ばれたといわれている。事実はかなり違うと言われているものの、それ以降、ダークラムは「ネルソンの血」とも呼ばれるようになった。
こうした航海とのエピソードの多いラムであったが、20世紀に入り、第2次世界大戦によってそれまでとは異なる発展をみる。
アメリカではジンが人気だったが、ドイツとの戦いに追われるイギリスからのジンの入手が困難に陥る。そこでラムが新たな人気を呼ぶことになった。そして戦後もラムの需要は減ることがなかった。カクテルベースとしての役割が高まるほどにアメリカから世界へと広がっていく。
とくに1970年代からはウオツカとともにインターナショナルな酒としての地位を着実に固めていった。

ラムの語源

ラムにはさまざまな語源説があるが、最も有力視されているのがラムバリオン(Rumbullion)。ラムのことが書かれた最古の文献はイギリスの植民地、バルバドス島に関しての古文書とされている。1651年に島を訪れたイングランド人が残した記録で、島民がサトウキビからつくった蒸溜酒を飲んで騒いでいる様子を表現したものだという。
ラムバリオンとはイングランド南西部デヴォン州の方言で“興奮”という意味だといわれている。その語頭をとってRumになったという説である。

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