シェークやステアといったよく知られた器具を使用する技法の他にも、カクテルづくりにはさまざまな調整方法がある。
シェーク Shake/シェークは振る。カクテルレシピにシェークとの記載があれば、「シェーカーに氷と材料を入れて、振ってつくる」ということ。
とくに決まった振り方や回数はないが、指先に冷たさが伝わり、シェーカー表面に霜がついたような状態になればでき上がり。ただし材料に砂糖や卵、クリームなどが含まれる場合はそれらが溶けにくいので、十分ミックスするためにさらによく振る。
シェーカーは混ざりにくい材料を強く混ぜ、同時に冷たくする目的の器具。ステンレス製のものが一般的で、トップ(Top)、ストレーナー(Strainer)、ボディ(Body)からなる。金属製のカップとグラスのふたつからなるボストン・シェーカーもある。
ステア Stir/ステアとは混ぜる、撹拌(かくはん)する。レシピにステアとあれば、ミキシンググラスに氷と材料を入れ、バースプーン(柄が長く、中央部が螺旋状によじれていて、指先でスムーズに回転することができる)でかき混ぜてつくる手法のこと。
ミキシンググラスは比較的混ざりやすい材料をステアでミックスするための大型グラス。注ぎ口があり、またバー・スプーンでステアしやすいように内側の底が丸くなっている。バー・グラスとも呼ばれる。
ビルド Build/ビルドとは、シェーカーやミキシンググラスといった器具を使用しないで、「グラスに材料を入れ、直接つくる」ことをいう。ジン・トニック、ウイスキー&ソーダ(ウイスキー・ハイボール)など、ビルドの手法のカクテルは多い。
ブレンド Blend/ブレンドとは混和。思い浮かぶのはウイスキーのブレンドだが、カクテルの場合はブレンダー(日本では一般的にミキサーと呼ばれる)を使用して、材料をよく混ぜ合わせてつくる手法のこと。クラッシュドアイス(細かく砕いた粒状の氷)を材料に加え、シャーベット状のフローズン・スタイルのカクテルをつくる場合、またフルーツをトロッとした液状に仕上げるときなどにブレンダーを使用する。
デコレーション Decoration/フルーツをはじめとした主に食材をカクテルに飾ることをデコレーションという。アメリカではガーニッシュ(Garnish/飾り、つけ合わせ)と表現されたりもする。
カクテルピンにフルーツを刺したり、「ホーセズ・ネック」というカクテルのようにレモンの皮を長く螺旋状(かつらむき)にむいて飾ったりとさまざまな方法があるが、使用するグラスによってデコレーションの大きさや形状は異なる。また辛口のカクテルにはオリーブ、甘口にはチェリー、オレンジジュースを使ったカクテルにはオレンジのカットやスライスなど、レシピから生まれる風味によってデコレーションを合わせる。
さらには柑橘類やリキュールでグラスの縁を濡らし、そこに塩や砂糖を付ける、スノー・スタイルもある。