サントリー ワイン スクエア
1989年愛知県生まれ。同志社大学在学中、留学先のニュージーランドでワインに魅了され、2014年にソムリエ資格を取得。2017年「第8回全日本最優秀ソムリエコンクール」優勝。2018年「第4回A.S.I.アジア・オセアニア最優秀ソムリエコンクール」優勝。2023年「第17回 A.S.I.世界最優秀ソムリエコンクール」5位。2019年よりサントリーワイン・ブランドアンバサダー。京阪グループのフラッグシップホテルTHE THOUSAND KYOTOのシェフソムリエを務める。いま日本で最も注目されるソムリエの一人。
2023.11.14記事: 岩田渉(アンバサダー)
皆様、こんにちは!サントリーワイン・ブランドアンバサダーのソムリエ 岩田です。
今回ご紹介するのは、最近日本国内でも注目を集めるブドウ品種の1つである黒ぶどう、プティ・ヴェルドです。サントリーではこのぶどうを、特に登美の丘の地で非常に高いポテンシャルがある品種としてとらえており、最近ではトップキュヴェである「登美 赤」においてブレンドの主体を担うようになるなど、近年必要不可欠なぶどう品種となっております。
もともとプティ・ヴェルドはボルドー原産の品種です。しかしボルドーのぶどう品種の王様(または女王様?)といえば、カベルネ・ソーヴィニョン、そしてメルロが挙げられるのは皆様もご存知かと思います。それらに対してプティ・ヴェルドは「補助品種」として、ブレンドに数%使用されて来ました。元来とても力強い、フルボディなワインを生む品種として知られているので、ブレンドされるワインに強さや骨格を与えるとともに、色付けやスパイシーな香りを付与する、いわば料理でいう食材へのアクセントを加える必要不可欠な調味料的な役割を担ってきました。
そのようにブレンドにて、少量使用されるだけのプティ・ヴェルドなので、100%その品種を使用したワインは世界中を探しても少なく、またブレンドのメインとなることも多くはありません。昔からボルドーでも縁の下の力持ち的な存在で、多くのグランヴァンを支えてきたこの品種が、もしかしたら登美の丘ワイナリーだけでなく、これからの日本の未来を担う偉大なぶどう品種として、そのポテンシャルを発揮しようとしているのです。
サントリー登美の丘ワイナリーのプティ・ヴェルドの畑
最近の日本の気候は(今年の2023年の夏がまさにそれを指し示していました)異常とも言ってよいほど、夏が暑くなる年が続いております。適度に暖かければぶどうもすくすくと成長し、ワインにとって十分な糖度を得て、酸度を保持することができますが、暑すぎてしまうと、十分に色が付かなかったり、成長を止めてしまったりします。日本で栽培されているカベルネ・ソーヴィニョンもメルロもこの気候に大変苦労する一方で、このプティ・ヴェルドはそのような環境の中でも、涼しい顔をしながら十分な糖度と酸、そして深いルビー色を得ることができるのです。
登美の丘のワイナリーでも暑い夏が続く中で、このテロワールだからこそ、プティ・ヴェルドの品種としての個性を存分に発揮することができ、単体として、そしてブレンドのメインのぶどう品種としても、日本ワインとしても重宝されるような味わいの「凝縮感」と「充実感」を表現することができます。フランスではスポットライトを浴びる機会が滅多にないこの品種が、この登美の丘のテロワールにおいては、もともと荒々しさがある個性が和らぎつつ、日本らしいエレガントな酒質が得られるなど、最も輝く品種の一つになっています。
プティ・ヴェルドのポテンシャルを信じる登美の丘ワイナリーの大山栽培技師長
初登場のプティ・ヴェルド100%のワイン「登美の丘 プティ・ヴェルド 2020」(ワイナリーショップ及び公式オンラインショップ限定発売)
登美の丘ワイナリーでもそのポテンシャルを最大限に引き出すための栽培や醸造の努力をすることで、「グランヴァン」としての格と飲み手を魅了するクオリティの高さを引き出しております。まだプティ・ヴェルド単体のワインを飲んだことがない方も多数おられるかと思いますので、ぜひこの機会にたくさんの魅力を秘めたこのぶどう品種のワインを味わってみてください!