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ターザン

現代の子供たちは、何かにぶら下がりながら訳もなく「アーア、アー」と声を発したりするのだろうか。野山を駆け、野生児となってクタクタに疲れ果てるまで遊んだりするのだろうか。どこまでターザンというキャラクターを知っているだろうか。

この夏、映画『ターザン:REBORN』が公開された。これで何十作目になるのか数えてみようとしたが途中でやめた。第1作『ターザン』の映画化は1918年。実写映画、アニメ、TVとさまざまに描かれつづけ、なんと100年にもわたるシリーズである。

新作REBORNは劇場に足を運ぶ時間がなかったが、観たという知り合いの女性はターザン役のアレクサンダー・スカルスガルド(スウェーデン語発音ではスカーシュゴード)が超カッコイイと言っていた。

スカルスガルドはスウェーデン出身の40歳。身長194センチの鍛え抜かれた逞しい肉体でアクション・アドベンチャー物語の主人公を見事に演じているという。

わたしのような「アーア、アー」と自然の中で遊びほうけた時代の人間にとってのターザン俳優は、ジョニー・ワイズミューラーである。ターザン役を演じた俳優のなかで最も名高い。実はこの人物の名、前回第44回のエッセイ『ハワイアン・ウォーターマン』で登場している。

1924年パリオリンピック100メートル自由形でハワイの英雄、デューク・カハナモクの3連覇を阻止した金メダリスト(カハナモク銀)であり、次の28年アムステルダムオリンピックでもワイズミューラーが連続金に輝いている。


ジョニー・ワイズミューラーは1904年(−1984没)にオーストリア・ハンガリー帝国でドイツ系の家庭に生まれ、その年の暮れに家族でアメリカに移住した。彼もジャーマン・アメリカンということになる。

シカゴで育ったようだが、病弱な彼に医者は水泳をすすめ、YMCAのチームに12歳で加わってから人生が変わっていく。

1922年、彼が18歳の年に、デューク・カハナモクの持つ100メートル自由形の世界記録を更新し、はじめて1分の壁を破った。そして2回つづけてオリンピックで活躍し、1929年からはハリウッドで映画スターの道を歩み、ターザン役で大成功を収めたのだった。

ターザン役デビューは1932年。映画シリーズ9作目となる『類猿人ターザン』だったが、たちまちにしてセンセーションを巻き起こした。それから1940年代にかけて12本ものターザンシリーズに出演して世界的な名声を得たのである。

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