リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックが終了した。毎回のことながらアメリカの競泳と陸上競技においてのメダル獲得数は凄まじい。とくに競泳となると圧倒的といえる。
アメリカ競泳はリオ終了後、全31回のオリンピックでのメダル獲得数が553個となった。そのうち金メダルは246個。つづく2位オーストラリアがメダル獲得数188個、うち金メダル60個。この数字を見比べるだけで、アメリカがいかに競泳王国であるかがわかる。
1896年第1回アテネオリンピックでの競泳種目は50メートル自由形のみ。ハンガリー選手が優勝。2回、3回大会では競泳は実施されず、1908年第4回ロンドン大会からアメリカ競泳王国の歴史がはじまる。
100メートル自由形に限って話をすると、ロンドン大会でチャールズ・ダニエルが競泳でアメリカ人初の金メダルを獲得。そして1912年ストックホルム、20年アントワープの両大会でデューク・カハナモクが連続金、24年パリ、28年アムステルダムではジョニー・ワイズミューラーが連続金に輝いている。しかもアントワープ、パリの2大会連続で金銀銅とアメリカが表彰台を独占した。
さて、ここでデューク・カハナモクという名に反応された方がいらっしゃるのではなかろうか。ハワイやサーフィンに通じていらっしゃるか、あるいはコットンシャツをはじめとした彼の名を冠したファッションブランドで、また2003年の映画『ライド』でその存在を知った方もいらっしゃることだろう。
では、今回は潮の香のする偉大な金メダリスト、カハナモクのお話。潮風には甘い香味がふさわしい。南国の海辺で飲むカクテルには甘いジューシーさが好ましいように、ここからは、バーボンのバニラ様の甘みを口中に感じながらお読みいただきたい。
できるならば力強いクラフトバーボンの「ブッカーズ」をどうぞ。オークの樽のニュアンス、バニラの甘さ、高度に凝縮されたフルーツとタンニンの味わいの感覚は、ハワイが生んだ英雄の話にふさわしい。
ワイキキでビーチを背に両手を広げて凛々しく建っている男性の銅像がある。それはハワイ初のオリンピック金メダリストで“サーフィンの父”と呼ばれているデューク・パオア・カハナモクの像である。
彼は1890年にハワイのオアフ島に生まれた。少年時代はワイキキ・ビーチで観光客相手のご用聞きやカヌー、サーフィンのインストラクター的なお手伝いで日銭を得るビーチ・ボーイをしながら過ごす。18歳の時には後年アウトリガー・カヌー競技の名門となるクラブ「フィ・ナル」を結成している。