親愛なる皆さま すばらしいサントリーホールのオルガンを演奏できることをたいへん嬉しく思います。わたしは1年の任期でヨーロッパから来日していますが、日々、日本文化の奥深さに触れ、新たな発見をしています。 7月7日は「七夕」です。プログラムには、伝統的なこのお祭りを祝うように、わたしたちを楽しく晴れやかな気持ちにしてくれる曲を選びました。 J. S. バッハ(1685~1750)の「前奏曲とフーガ ト長調」は、才能豊かな息子のヴィルヘルム・フリーデマンが、教会での仕事を得るための試験で演奏したことでも知られていますが、喜びに満ちた快活な音楽です。モーツァルト(1756~91)の変奏曲「ああお母さん、あなたに申しましょう」のメロディは、「きらきら星」として、天空で愛らしく輝く小さな星々の歌になっています。そして、日本の歌「たなばたさま」の美しいテーマにのせて、織姫と彦星の恋の物語を即興で綴っていきたいと思います。ヴィエルヌ(1870~1937)の「ウェストミンスターの鐘」は、鐘の音のテーマが、冒険物語のように、時に明るく、時に不気味に、形や音色を変えながら展開します。そして、最後にはじけるような大きな喜びのフィナーレを迎えます。 音楽に身をゆだね、心地よく幸せなひとときをお過ごしいただければ幸いです。 (ニコラ・プロカッチーニ)