― 水を飲むことは「健康によいと思う」人は年々増加。
水を飲むときに意識することトップ3は、「血液さらさら」、「熱中症予防」、「便秘解消」 ―
ミネラルウォーターは、今や日常生活には欠かせないものとなっています。
サントリーは、「水と生きる」ことを社会との約束と位置づけており、ミネラルウォーター市場をリードする企業として、ミネラルウォーターがどのように飲用されているのか、飲用頻度、飲用機会や購入実態などを明らかにすることを目的に、1991年から毎年市場動向調査を実施しています。
今回は、「水と健康に関する意識」にもフォーカスを当て、生活者の健康意識と水の飲用実態の関係などを明らかにしていきます。
I.消費者利用動向調査
1991年から当社で実施している生活者対象の飲用動向調査の2018年版です。今回は、「水と健康に関する意識」にもフォーカスを当て、レポートします。
ミネラルウォーターをはじめとした飲用水の利用実態 |
1.調査対象
首都圏(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)および関西圏(大阪府、京都府、兵庫県、奈良県)に居住する20~69歳の男女個人で、昨年の6月以降に以下の6種類の有料の水、および水道水のいずれかを「飲用水」として利用した人を対象としました。
a)ミネラルウォーター(ペットボトル、缶、ビンに入った非発泡かつ甘くないもの)
b)炭酸水またはスパークリングウォーター
c)フレーバーウォーター
d)宅配サービスのミネラルウォーター(ウォーターサーバーを使用し自宅で利用するもの)
e)スーパーの店頭などで、セルフサービスで詰める水
f)自宅の浄水器(水道直結式のアルカリイオン整水器や浄水器)の水
2.調査対象者数
500人(男性253人、女性247人)
3.調査方法
インターネット調査
4.調査期間
2018年6月29日(金)~7月1日(日)
調査結果の概要は次のとおりです。
2.主な調査結果
(1)水と健康に関する意識
・水を飲むことは「健康によいと思う」人は年々増加、今年は86%
(2)1日に飲む水の量
・1日に飲む水の量は約1リットル 健康イメージと比例し、年々増加傾向に
(3)水を飲むときに意識すること
・全体の7割以上が、体のことを意識して水を飲んでいる
・意識することのトップ3は「血液さらさら」「熱中症予防」「便秘解消」
・年代に合わせて意識する内容も変化
20代は「むくみ防止」、40代は「代謝をあげる」、60代は「脳梗塞予防」
(4)健康意識と水を飲む量の関係
・体のことを意識して水を飲む人は、水を飲む量も多い
(5)水の飲み方
・水を飲む習慣トップ3は「入浴後」「朝起きてすぐ」「寝る前」
・「のどが渇いたと感じる前に飲む」ことを習慣にしている人は3人に1人
(6)熱中症対策
・熱中症予防を意識して水を飲む人でも、「定期的に水を飲む」ことを習慣化できている人は3割しかいない
(7)広がりを見せる水系飲料
(スパークリングウォーター、フレーバーウォーター)
・スパークリングウォーター、フレーバーウォーターも飲んだことがある人は引き続き上昇傾向
3.調査結果の詳細
(1)水と健康に関する意識
水を飲むことは「健康によいと思う」人は年々増加 |
水を飲むことは健康によいと思うかと聞いたところ、全体の85.8%が「よいと思う」(「とてもよいと思う」45.6%+「どちらかといえばよいと思う」40.2%)と答えています。
この結果を2015年からの結果と比較すると、「よいと思う」と答えた人の割合が年々大きくなっています。水を飲むことは健康によいという意識が広く浸透してきているようです。(図1)
(2)1日に飲む水の量
1日に飲む水の量は約1リットル 健康イメージと比例し、年々増加傾向に |
水道水を含む1日に飲む水の量を聞いたところ、平均963ミリリットルとなりました。そのうち、ミネラルウォーターを飲む量は、全体の約4割にあたる387ミリリットルでした。
これを2015年からの調査結果と比較すると、飲む水の量、ミネラルウォーターの量はともに年々増えています。水を飲むことは「健康によい」と思う人が増えるとともに、飲む水の量も増えているようです。(図2)
(3)水を飲むときに意識すること
全体の7割以上が体のことを意識して水を飲んでいる |
水を飲むことが「健康によい」という意識が浸透してきていますが、水を飲むときに、体のことを意識して飲むかと聞いたところ、「いつも自分の体のことを意識して飲んでいる」(27.8%)と「たまに自分の体のことを意識して飲むことがある」(45.0%)をあわせて、全体の72.8%が体のことを意識して水を飲んでいることがわかりました。
性・年代別に見ると、男性よりも女性のほうが体のことを意識して水を飲む意識が高く、40代以降の女性では8割以上が体のことを意識して水を飲んでいます。(図3-1)
体のことを意識して水を飲むと答えた364人に、意識することを具体的に聞くと、「血行促進・血液さらさら」(53.8%)、「熱中症予防」(49.7%)、「便秘解消」(33.8%)、「デトックス効果」(32.7%)、「代謝をあげる」(27.7%)などが上位にあげられました。(図3-2)
この結果を年代別に見ると、20代から50代までは「血液さらさら」が1位ですが、60代は「熱中症予防」(67.9%)がトップとなっています。(表1)
また、年代別の結果を全体の平均値と比較すると、年代に応じた体の悩みが水を飲むときの意識として高くなっています。
(4)健康意識と水を飲む量の関係
体のことを意識して水を飲む人は、水を飲む量も多い |
1日に飲む水の量を、体のことを意識して水を飲む人とそうでない人で比べてみました。
「いつも自分の体のことを意識して水を飲んでいる」人は1日に1,090ミリリットルを飲んでいますが、「自分の体のことを意識して水を飲むことはない」と答えた人では808ミリリットルとなり、282ミリリットルもの差があることがわかりました。体のことを意識して水を飲む人ほど、飲む量も多いようです。(図4)
(5)水の飲み方
水を飲む習慣トップ3「入浴後」「朝起きてすぐ」「寝る前」 |
日常生活のなかでどのように水を飲んでいるかを聞きました。その結果、習慣化している水の飲み方は、「入浴後に飲む」(42.6%)、「朝起きてすぐ飲む」(42.0%)、「寝る前に飲む」(39.2%)の順となりました。
「のどが渇いたと感じる前に飲む」をいつもしている人は33.0%と、3人に1人の割合となっています。(図5)
(6)熱中症対策
熱中症予防を意識して水を飲む人でも |
今年の夏は連日の酷暑が続いていますが、総務省消防庁によると、今夏(7月9日~15日)の熱中症搬者は全国で9,956人(速報値)にのぼり、前年(7,414人 確定値)と比べ134.3%も増えています。また、東京消防庁は、7月18日、19日の救急出動件数が、救急業務を始めた1936(昭和11)年以降過去最多となり、要因として「熱中症の疑いによる搬送が相次いだため」と発表しています。
熱中症で救急搬送された人の発生場所は「住居」が37%と最も多くなっていますが(総務省消防庁、平成29年5~9月熱中症による救急搬送人員数に関するデータ)、熱中症の発生場所が最も多いと思う場所を聞くと、全体の43.8%が「住居」と正しく認識しています。(図6-1)
しかし、これを性・年代別に見ると、20代男性(22.2%)と30代男性(16.4%)では「住居」と回答した人がまだ少なくなっています。(図6-2)
熱中症は子どもや高齢者に多い傾向がありますが、誰もがなる可能性があるので、年代にかかわらず注意が必要です。
体のことを意識して水を飲むと答えた人(364人)のうち、熱中症予防を意識して水を飲むと答えた181人に、習慣にしている水の飲み方を聞いた結果が(図7)です。熱中症対策になる水の飲み方は、「のどが渇いたと感じる前に飲む」(34.3%)、「1日のなかで定期的に水を飲む」(32.0%)などですが、実践率は3割程度と決して多くはありません。熱中症予防を意識して水を飲んでいる人でも、習慣化できていないのが現状のようです。
(7)広がりを見せる水系飲料の飲み方
スパークリングウォーター、フレーバーウォーターも 飲んだことがある人は引き続き上昇傾向 |
店頭ではミネラルウォーターだけでなく、スパークリングウォーター(炭酸水)やフレーバーウォーターなどをよく目にするようになりました。これら水系飲料の1年間の飲用経験を聞くと、いずれも上昇傾向を示しています。(図8)
ミネラルウォーターをはじめ、スパークリングウォーター(炭酸水)やフレーバーウォーターなど、水系飲料全体での飲用シーンが広がっていることがうかがえます。
日本のミネラルウォーターの歴史は、1970年代前半、業務用市場で販売された瓶入りのミネラルウォーターにまでさかのぼります。その後、さまざまな時代背景を反映しながら、ミネラルウォーターは着実に日本人の生活の中に浸透してきています。
●1980年代後半~家庭用市場への広がり
自然・健康ブームに加えて、海外旅行の増加によってミネラルウォーターに接する機会が増えたこと、さらに水道水の質への不安が問題になるなどの要因から、ミネラルウォーターは、それまでの業務用市場から家庭用市場へも広がりはじめました。
●1990年代~家庭用市場で大きく伸長
1990年代に入って、マンションの貯水タンクの汚れや水道水の問題が報道されるようになりました。これを受けて、家庭用のミネラルウォーターの消費量は、国産が水道水の代替品として、輸入も1993(平成5)年のブームによって、ともに大幅に拡大しました。また、1994(平成6)年の猛暑・水不足による需要増や災害時の備蓄への意識の高まりにより、ミネラルウォーターは、家庭における日常品としての地位を確実なものにしました。
しかしながら、1995(平成7)年秋の異物混入事件により輸入ミネラル ウォーターが大幅に減少した影響を受け、1996(平成8)年の家庭用ミネラルウォーター市場は、90年代で初めて前年を下回る結果となりました。一方でこの事件によって、ミネラルウォーターの安全性、品質に対する信頼がミネラルウォーター購入時のポイントとして消費者に大きく意識されるようになります。同年4月に国産小容量ペットボトル製品の販売が解禁。これにより、ミネラルウォーターの飲用機会が広がり、国産ミネラルウォーターの消費量は大幅に増加しました。
また、いわゆる「2000年問題」により、停電対策として家庭でミネラルウォーターを備蓄した人が多かったため、1999(平成11)年のミネラルウォーター市場は前年比3割増と大幅に伸長しました。
●2000年~健康志向の高まりなどで拡大。2017年は前年比102%で過去最大規模に
2000(平成12)年から2006(平成18)年までは健康志向の高まりなどにより、ミネラルウォーター市場は、拡大を続けていましたが、2007(平成19)年からは消費者の生活防衛意識の高まりなどを受けて、ほぼ横ばいの傾向でした。
2011(平成23)年は、東日本大震災後の備蓄用の需要が急増するなどの影響もあり3,172千キロリットル(前年比126.0%)と大きく伸長し、20年前の11倍、10年前の約2.5倍の規模にまで拡大しました。
2017(平成29)年の国産ミネラルウォーターの生産量3,255千キロリットル(前年比102.5%)、輸入ミネラルウォーターは340千キロリットル(前年比98.3%)で、合計3,594千キロリットルと過去最大規模となり、国産ミネラルウォーターの生産量は2001(平成13)年以降、増加傾向が続いています。(図9)
●日本の国民1人あたりの年間消費量推移
日本の国民1人あたりのミネラルウォーター年間消費量は、2007(平成19)年からは19.7リットル前後で安定的に推移していましたが、2011(平成23)年は、東日本大震災の影響もあり、24.8リットルと大きく伸長しました。
2017(平成29)年は28.4リットル(前年比102.2%)と、さらに伸長し、これまでで最も多くなっています。(図10)
以上