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コーヒー果実の熟度によって増減する生豆中の成分とは?

世界中で飲み親しまれているコーヒーは、コーヒー生豆を焙煎、抽出することで作られます。私たちはコーヒー果実の熟度の変化によって増減するコーヒー生豆中の成分を明らかにしました。

サントリーでは、本当に美味しいコーヒー飲料をつくりたいという思いから、植物原料に遡って研究を進めています。
コーヒーノキは色鮮やかな果実をつけ、果実の熟度によってその色は変化します。コーヒー果実の中にある種子はコーヒーの原料となる生豆になりますが、熟度による生豆の変化はまだまだ未解明でした。
そこで私たちはコーヒー果実の熟度に応じて変化する生豆中の代謝物に着目し研究を開始しました。

コーヒー果実
コーヒー果実
焙煎前の生豆は白っぽい色
焙煎したコーヒー豆(左)と焙煎前の生豆(右)

生豆に含まれる数千の成分を網羅的に解析

生豆には多くの成分が含まれていますが、その中には極めてわずかしか含まれないものもあります。成分によっては含有量によらずコーヒーの熟度に大きく影響する成分があるため、熟度の鍵となる成分探索のため微量な成分も検出できる最新の分析技術が必要とされました。そこで、私たちは医療分野で微量の血液や唾液から病気の診断を行う際に使われる高精度なメタボロミクス(※)と呼ばれる技術を新たに導入しました。この技術を使えば、極微量な成分も含め、数千種類の成分について含有量の変化を網羅的に追跡することができます。

※データサイエンスを活用して代謝物(メタボライト)を包括的・客観的に解析する技術。代謝物は植物や動物の細胞の生命活動によって生産される化合物です。

熟度によって変動する成分を発見!

私たちは共同研究先のコーヒー畑で管理されている9つの品種から熟度の異なる果実を収穫し、生豆の成分をメタボロミクス技術を用いて解析しました。
解析の結果、未成熟な果実から得た生豆には、品種にかかわらず共通してトリプトファンというアミノ酸が含まれ、その量は果実が成熟するにつれて減少することが分かりました。トリプトファンはイネやトウモロコシにおいて、オーキシンという成長ホルモンの前駆物質であることが知られていましたが、研究を通じてコーヒーの実の成熟過程においても重要な成分で、成熟度を予測できるマーカーとなることを世界で初めて発見しました。さらにトリプトファンは焙煎の過程で不快な未熟臭のもととなるインドールやメチルインドールになることが分かりました。

丸いシルエットのコーヒーノキ
ハワイ農業研究センターのコーヒーノキ
コーヒー果実はオリーブの実みたいにいろいろな色
収穫した熟度4段階のコーヒー果実9種

私たちの挑戦

おいしさの実現に向け、植物原料の本質を理解することは大切です。われわれは物質と現象の仕組みを理解することで、ものづくり現場と相互連携し、原理原則にもとづいた新しいものづくりにつながる実用化技術の開発にチャレンジしています。自然の恵みの秘めた力を見つけ出し、新しい価値創造に貢献したいと思います。

分析中の様子
関連リンク
ニュースリリース「コーヒーの香味に影響するコーヒー果実の熟度と生豆に含まれる「トリプトファン」が、高い相関性をもつことを世界で初めて解明」(2014.09.11)

※部署名、役職名、写真は、制作(インタビュー)当時のものです。

※部署名、役職名、写真は、制作(インタビュー)当時のものです。

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