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花の色は、花びらにどんな色素が蓄積するかによっておおむね決まります。赤、紫、青などの花色の成分はアントシアニンと総称されます。アントシアニンの構造と色は多彩ですが、発色を司る骨格部分(発色団)の構造は主には3種類に分けられます(図1)。サルビアなどのオレンジや鮮やかな赤い色の花びらにはペラルゴニジン、バラなどの赤や紅色の花びらにはシアニジン、リンドウやキキョウなどの紫や青い花にはデルフィニジン(青色色素ともよばれます)という化合物が含まれることが多いです。これらの構造を比較してみると水酸基(OH)の数が違うだけです(参考ページ:花の色を自由に変えられます)。このわずかな違いで色素の色が変化します。
バラには赤・オレンジ・ピンクなど様々な色があり、これらの色は、シアニジンとペラルゴニジンに由来します。赤いバラにはシアニジンが、オレンジ色のバラにはペラルゴニジンが主に含まれます。バラに「青い色」がないのは、青色色素が花弁に存在しないことが理由です。従来の品種改良で作られたバラの中には、青系と総称される品種もありますが、これらにもデルフィニジンはありません。シアニジンの量を減らすことで、青く見えるように品種改良されたようです。なお、黄色のバラはアントシアニンとはまったく異なる化合物であるカロテノイド(カボチャ、ニンジンなどの色の成分)に由来します。
植物がどの種類の色素を合成するかは、その植物がどんな遺伝子を持っているかで、生まれつき決まっています。バラは、青色色素を合成するために必要な遺伝子(青色遺伝子、学術的には、フラボノイド3',5'-水酸化酵素遺伝子(図1))を持っていないため、青色色素を合成しません。従って交配を繰り返してもバラの仲間には青色遺伝子がないため(バラ科のイチゴやリンゴにもありません)、青色色素を合成することができず、青いバラを作ることはできませんでした。
バイオテクノロジーを利用すると、他の生物の遺伝子を利用して、目的の生物の性質を変えることができます。青い花から取り出した青色遺伝子をバラの中でうまく働かせることにより、青色色素を蓄積するバラを作ることができました。いろいろな工夫を行なうことで青色色素の含有率を高め、花の色が青くなったバラを得ることができました。従来のバラよりも青いこと、青色色素を蓄積していること(図2)から、2004年に青いバラの誕生という広報発表を行い、国内外で大きく報道されました。
※部署名、役職名、写真は、制作(インタビュー)当時のものです。
※部署名、役職名、写真は、制作(インタビュー)当時のものです。