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こうして積み上げた有効性と安全性を示すデータを携えて、ケルセチン配糖体配合の飲料のトクホ申請を行いましたが、そこからが本当に長かったですね。申請から許可が下りるまでになんと5年もかかっています。申請したときの所管官庁は厚生労働省でしたが、許可を受けた時には消費者庁になっていたほどです(笑)。
特に新しい成分、新しいヘルスクレームでの申請ともなると、審査する側も慎重にならざるを得ないので、どうしても時間がかかってしまいます。申請後、まず有効性を議論し、その後、安全性の議論に入り、最後に総合的に判断するというように段階が分かれており、それぞれの段階で、さまざまな分野の専門家の審査を受けます。どの先生も新たな成分だということで興味津々。いろいろな質問を受けました。
しかも、その審議の場には我々は出席できないので、質問はすべて文書でのやり取りになります。当然、口頭でのやり取りとはちがって、時間もかかる。質問の答えとして提出したレポートは、最終的に10センチのファイルで3冊にも上りました。
なかでも一番てこずった質問は「この成分を摂取し続けたら、どんどん痩せ続けてしまうのか?」というもの。どう考えても、体の脂肪がゼロになってしまうということはありえないと思いましたが、それを証明するのは案外難しくて……。
そこで、通常のトクホの申請の場合、12週間のヒト試験で評価されますが、この質問に答えるために我々は24週間の試験を決行したのです。
おそらくこういう質問は発売後にお客様からも寄せられると予想できたので、その時にきちんと根拠のある答えを用意しておきたいと考えました。発売すれば重要な商品になることは認識していましたし、通常はそこまでお金や時間をかけてやらない試験であっても、ここでやっておけば後々有効性を示す貴重なデータになるはず──。
いろいろな意味でもやったほうがいいと判断して行うことにしたのですが、被験者の方が飲むだけで6カ月、結果が出るまでには1年近くかかってしまいました。
商品化の際にはマーケティング部門からできるだけ早くと言われるのは常ですが、さすがにこの時はずいぶんせかされました。でも、審査に通らなければトクホとして売ることはできないわけですし、通すためにはこの試験が絶対に必要だと説得しました。
マーケティング部門とはいいチームワークが築けていたので、最終的にはこちらの主張をきちんと信用し、納得してくれました。
このプロジェクトにはじつに多くの人が関わっています。トクホを申請するにはデザインや商品名も出さなくてはいけないし、既定のスペックのものが作れるか生産実験をして確認しなくてはなりません。いつ発売になるのかもわからない商品のデザインを考え、実際に製造ラインで作ってもらうわけです。
ですから、研究サイドだけではなく、マーケティングやデザイン部、生産部などの協力が欠かせません。そんないろいろな部署の人々がチームとして一丸となって頑張ってくれたからこそ、特茶は成功したのだと思います。
じつは私は「特茶」発売直前に、育児休暇で現場を離れることになりました。そして「特茶」発売の同じ日に、子どもが誕生したのです。私にとって大切な2つの宝物の誕生が重なり、まさに喜びも倍増でした。
※部署名、役職名、写真は、制作(インタビュー)当時のものです。
※部署名、役職名、写真は、制作(インタビュー)当時のものです。