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私は入社後すぐに研究所に配属され、素材探索一筋で研究を進めてきました。健康素材や医薬の探索研究を担当してきたことが、サイエンスへの理解や素材業界との太いネットワークを構築できたという面で、トクホ商品開発を進める際に大いに役に立ちました。
同時に、競合他社の商品開発情報や素材研究の概要も学会情報収集などで把握していましたから、そういう意味では独自性とポテンシャルの高さを持った素材を選ぶということにはある程度、強みを発揮できたのです。
新規トクホプロジェクトのリーダーとして研究開発に取り組んでいた私は、その後のトクホの特命プロジェクトチームにも参画することになりました。ここで担当したのは独自素材を軸とした商品アイデアの提案でした。特に黒烏龍茶については、ウーロン茶特有の成分OTPPに脂肪の吸収を抑える効果を発見したことをベースに、独自製法を確立して中味の設計を進めました。
ほとんどの茶ポリフェノールは渋味が強いのですが、このOTPPの舌触りはまさにベルベットのよう。そのため、黒烏龍茶は、フルボディの赤ワインに相当するようなスムーズで厚みのある味わいにできたのが成功のポイントのひとつだと思っています。
トクホの特命プロジェクトでは、私は素材探索には単なる効果の高さだけではなく、消費者に購入をうながす効能ターゲットが何かという視点や、毎日飲み続けることができる中味かどうかが重要であることを学びました。効能ターゲットのポテンシャルの評価、味の良さと有効性を併せ持ったOTPPのような素材の必要性を理解できた経験は、のちに特茶の開発で生かすことができました。
肥満ターゲット飲料はヒット商品になる大きなポテンシャルを持つことが期待されていました。黒烏龍茶は食事と共に飲むと脂肪の吸収を抑制しますが、さらに脂肪分解・燃焼作用のメカニズムを有するものがあれば、食事以外のシーンでも体脂肪低減商品として両立させることができるはず──。
そこで、我々は黒烏龍茶の発売前から脂肪分解・燃焼効果をもつトクホ飲料を開発しようとしましたが、当時はそれに適した素材を持っていませんでした。そのため、素材探索からトクホ許可には概ね最低5年はかかってしまうのです。
肥満ターゲットのトクホは大型商品になる可能性が高いため、我々はそんなに時間をかけていては大きな機会損失になると判断し、確実に開発につなげられる素材候補のリストアップから始めました。
コストが高いもの、味に大きな問題があるものは最初から除外し、食経験があり安全性も確認されているもののうち、文献等から脂肪分解・燃焼の効能を示す可能性がありそうな素材に絞って評価を進めることにしました。
そして、この中で選び出したのが、マメ科植物のエンジュ由来のポリフェノール「ケルセチン」でした。今回、ケルセチンというメジャーな成分がヒトで強い抗肥満作用を示す可能性があるという発見ができたのは、正直、驚きでした。
このように、従来とは異なる我々独自のアプローチにより、探索期間を大幅に短縮して1年で完了することができたのです。
脂肪分解・燃焼効果を示す素材としてケルセチンを選び出すことができたことから、早速トクホ申請に必要な試験、すなわち3カ月間摂取した際に体脂肪が減少することを確認する人での効能評価試験へと進めました。
まずは、想定メカニズムに照らし合わせながら試験条件を綿密に点検することからスタート。
素材選抜試験の段階では強めの運動を負荷していましたが、トクホ申請に必要な継続試験では、より日常の生活スタイルと通常の運動レベルを被験者に維持してもらい、予備試験の結果を考慮してケルセチンの量を決定し、飲むタイミングも工夫しました。
また、試験データのばらつきを極力抑えるために、試験現場にメンバーとともに張り付いて生活指導がきっちり徹底されているかを確認するなど、万策を尽くした試験を実施しました。
そして挑戦を始めてから約2年後、祈る思いで待った試験結果は期待通りのものとなりました。ケルセチンの有効性が確認できたことで、トクホ申請へとプロジェクトは大きく加速し、今日の特茶誕生へとアクセルが踏まれたのです。
ケルセチンは非常にポテンシャルが高い成分です。例えば炎症を抑える効果が高いため、当社のサプリメント「グルコサミン&コンドロイチン」にも配合されていますし、他にも脳、血管、腸などにもいい影響を与える可能性があることがわかりはじめています。
つまり、特茶は単なる肥満対策だけにとどまらず、我々が考えている以上にさまざまな効果を期待できるかもしれないということ。今後もケルセチンの新たな可能性を“探索”していきたいと考えています。
※部署名、役職名、写真は、制作(インタビュー)当時のものです。
※部署名、役職名、写真は、制作(インタビュー)当時のものです。