キノコ
シイタケやブナシメジなど身近な食材であるキノコ。森では枯れ木や落ち葉を分解して、土に還す大切な役割を担っています。
もしも森にキノコがいなかったら
もし、森にキノコがいなかったらどんなことが起こるのでしょうか。その答えを出してくれるのが、石炭です。今から3億6千万年前から約3億年前までの時代を石炭紀といいます。
その頃の地球には巨大なシダ植物が繁茂していましたが、枯れたシダの幹を分解してくれるキノコがまだ進化していませんでした。その結果、地上にはシダの枯れ木が積み重なり、やがて分厚い石炭層になっていきました。
その後、枯れ木を分解するキノコが誕生して以降は、一部の特殊な土地以外で石炭が生まれることはなくなりました。つまり、キノコは、枯れた木や枝葉などを分解し、土に戻してくれる大切な役割を果たしてくれているのです。
2種類のキノコ
キノコは栄養の取り方によって大きく2種類に分けられます。ひとつは、枯れ木や落ち葉などを分解して養分を吸収する「腐生菌」です。
分解された木や落ち葉は、ミミズなどの土壌動物やカブトムシなどの幼虫の餌になったり、森の土をフカフカで健全な土壌に変化させたりするための、いわば土壌改良剤の役割を果たします。
もうひとつは、生きている植物の根と共生する「菌根菌」です。菌糸を根の細胞の間に侵入させ、植物からは光合成産物の糖類などをもらい、反対に、土の中に張り巡らせた菌糸で吸収した水やミネラルを植物に与えます。マツタケやホンシメジなどが有名です。
菌根菌には、植物の根の細胞の間に菌糸を侵入させ、キノコを発生させる外生菌根と、キノコを発生させず、細胞内に菌糸を侵入させる内生菌根の二種類があります。
このように、キノコは枯れた植物を土に還したり、さまざまな植物と共生関係を築いたりしながら、森林の栄養循環を支えています。
キノコに関する活動
サントリーは、キノコ菌の研究を進め、新たな取り組みに挑戦しています。
夢は、キノコの山
マツ科やブナ科、カバノキ科など、キノコと共生するタイプの樹木は、共生に失敗すると自然界では枯れてしまいます。つまり、栽培した苗を山に植えても、周囲に共生できるキノコの菌がいない土地では育つことができないのです。
そのため私たちは、東京農業大学と共同で、キノコ菌と共生した強い苗木づくりの研究を進めています。あらかじめおいしいキノコと共生した苗をつくることができれば、将来的にキノコ狩りを楽しめる森に育てることが可能になるかもしれません。
この活動に携わる専門家
田中 恵
東京農業大学 准教授