SUNTORY CHALLENGED SPORTS PROJECT
vol.8「"走る楽しさ"を多くの人に伝えられるランナーになりたい」 パラ陸上(短距離) 佐々木真菜選手
チームメイトの佐藤智美選手とともに、若くしてパラ陸上・女子短距離種目の視覚障がいクラスをリードする存在として注目を集める佐々木真菜選手。「子供の頃から走ることが大好き」という生粋のスプリンターが描く夢とは。
写真提供/日本パラ陸上競技連盟
── 佐々木さんは、子供の頃から走ることが得意だったそうですね。
はい。小学校の頃から寒い日でも1人で校庭を何周もしたり、走ることがとにかく大好きで、健常のみんなと一緒に走る校内のマラソン大会でも毎回1位か2位でした。そんな折、小学5年生のときに担任の先生から市の陸上大会に出てみないかと勧められたので800mに出場してみたら、上位に入賞することができたんです。そこで「もっともっと速くなりたい!」と思い、陸上を本格的に始めようと決心しました。その後、盲学校に通っていた中学2年生のときに初めて全国規模の障がい者スポーツの大会に出て、800m、1500mで優勝したのですが、世界の舞台を意識するようになったのはそのあたりからですね。
── もともとは、今よりも長い距離を走られていたんですね。
そうですね。当時は800mか1500mで勝負したかったんですけれど、世界最高峰の大会では私の「T13」いう視覚障がいクラスが100mと400mだけということもあって、400mに転向しました。
── その400mで世界と勝負するために、日々の練習で心がけていることは?
私は長距離をやっていた頃からどうしても疲れてくると肩が上がってしまい、それによって腕と足のタイミングが合わなくなる傾向がありました。そうなると歩幅が小さくなりスピードにしっかり乗ることができず、タイムに大きなロスが出てしまいますので、そこは今でもいちばん意識している課題ですね。最近は筋力や体幹のトレーニングによってパワーがつき、ストライドも広くなってきているので、かなり改善できているのではないかと思っています。
── 昨年ジャカルタでのアジアパラ選手権では金メダルを獲得されました。
自信にはなりましたけれど、タイムには納得がいっていませんし、世界を視野に入れると自分の走りはまだまだだなと感じました。ここから代表選考に残れるようなタイムを出すためにさらにレベルアップしていきたいです。
── ちなみにオフはどのように過ごされていますか?
好きな絵を描いたり、音楽を聴いたり。あるいは両方同時に、ということもあります(笑)。音楽はどちらかと言うとバラードよりもアップテンポのものが好きですね。聴いていて心に残ったフレーズを、レース前に気持ちを高めるときに頭の中でリピートさせていることも多いですね。
── どのようなときに、「陸上をやっててよかった」と感じますか?
実は400mに転向して以降、高校3年間はあまり記録が伸びずに苦しんでいました。しかし東邦銀行に入行し、毎日トラックのあるすばらしい環境で練習させてもらえるようになったことでどんどんタイムが縮まってきています。そのように目に見える形で自分のレベルが上がっていることを実感できるというのは本当に幸せなことですし、さらにモチベーションも高まります。
── もし来年の大舞台に出場できたら、日本の皆さんにどういう走りを見せたいですか?
私が出場を目指している400mの視覚障がいT13クラスというのは、健常者と同じようなルールのもと競技が行われますので、その中で「こんなに速く走れるんだ」というところをアピールしたいですし、走ることそのものの楽しさをたくさんの方々に伝えられたら嬉しいですね。でも、それは目先だけの目標ではなく、その先も、大きな舞台で常に記録を狙っていけるような強い選手を目指していきたいです。
PROFILE
ささき まな●サントリー チャレンジド・アスリート奨励金 第1〜5期対象
1997年9月2日生まれ、福島県福島市出身。先天性の弱視で中学・高校と福島県立盲学校に通い、卒業後に東邦銀行陸上競技部に加入。専門種目は400mと200m(ともに視覚障がいT13クラス)で、両種目の日本記録、アジア記録を保持している。2018年のアジアパラ競技大会で400mの金メダルを獲得。
Photos:Takahiro Idenoshita Composition&Text:Kai Tokuhara