SUNTORY CHALLENGED SPORTS PROJECT
#33 「どんどん変わっていく自分が楽しみ」
陸上競技 岡部 蘭選手
Q.競技との出会いは?
私は軽度の知的障がいがあり、高校から養護学校に通いました。お母さんと相談して私の個性を生かせる学校を選んだのですが、ここで本格的に陸上競技を始め、今年で4年目になります。
きっかけは1年生の時に出場した障がい者のスポーツ大会です。軽い気持ちで100メートルにエントリーしました。実は、走るのは小さい頃から好きで、小学生の時に競技としてやっていたこともありました。でも、練習が好きじゃなかったのと、中学生になってパソコンや卓球などいろんなことにチャレンジするようになって、走ることからは遠ざかっていました。
だから、走るのは本当に久しぶりでした。フォームもよくわからないままのレースでしたが、とにかく気持ちよくて楽しかった。そのレースでは1位をとりました。体は少し重かったですけどね。
そんな経験をして、「もう一度走りたい」という気持ちがあふれてきました。その後、福島県の障がい者総合体育大会や全国障害者スポーツ大会で1位になり、福島パラ陸上競技協会に所属して本格的に競技に取り組むようになりました。
Q.タイに遠征してきたそうですね。
バンコクであった国際知的障がい者スポーツ連盟(INAS)の世界陸上選手権(2017年5月)に行ってきました。現地は気温が40度近くあって溶けそうなくらい。1回走るたびに汗がダラダラで、もう倒れそうでした。
大会には18カ国が参加しました。私は日本代表として100メートル、200メートル、4×100メートルリレーに出場し、100メートルは13秒73で銅メダル、リレーではなんと52秒14のID(知的障がい者)日本新記録で銀メダルをとることができました。緊張したけど、あこがれだった表彰台に立つことができ、思わずリレーのメンバーと一緒に泣いてしまいました。表彰台では日の丸を持って記念撮影もしたんですよ。
Q.大事にしていることは?
スタート前、緊張して泣いてしまうことがあるんです。でも、それだと力が入らないので、声を出すようにしています。「On Your Marks」(位置について)の声がかかったら、ピストルを打つ人、会場で応援してくれる人、そして自分に向けて「お願いします!」と言うんです。それからは何にも考えないで、自分の世界に入る。人と戦うんじゃなくて自分との戦いです。ゴールの先を目指して集中して走っています。
Q.今後の目標は?
今年から400メートルに初めて挑戦します。今までは100メートル、200メートルが中心でしたが、東京パラリンピックで知的障がい者が出場できるトラック競技は今のところ、400メートルからとなっているためです。
100メートルと400メートルの違いは、どこに力を入れるかだと思います。100メートルは一瞬だけど、400メートルはラスト100メートルでどれだけ伸ばせるかということでしょうか。これから練習に入るので楽しみですね。
Q.社会人になったばかりですね。競技と仕事の両立は?
おじいちゃんやおばあちゃんとコミュニケーションをとりながら介護をするのが私の仕事です。毎日、掃除をしたり、お皿を洗ったり。この仕事に就いたのは、病気のひいおばあちゃんの手助けをしたらすごく喜んで笑顔になってくれた経験があるからです。
平日は午後3時に仕事が終わって、5時から7時まで練習です。土日は9時から5時までみっちり練習。陸上も仕事も楽しいので全然大丈夫です。一緒に働いている人もいい人ばかりで毎日充実しています。
今の自分があるのは陸上競技と出会ったおかげです。陸上をやって、いろいろとできることも増えた。どんどん変わっていく自分が楽しみです。
岡部 蘭選手RAN OKABE
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●知的障がい(軽度)
障がいになったのは高校に入ってから -
●高校1年生のときに障がい者スポーツ大会に出場したのがきっかけで福島パラ陸上協会に入る
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●平成27年度、28年度とジャパンパラ陸上競技大会にて、100m、200mともに優勝
平成27年度 日本ID陸上競技選手権大会 優勝
2016INAS世界選手権選手選考会 優勝
2017INAS陸上競技世界選手権大会 日本代表 -
●特技:水泳(財団法人日本水泳連盟営力検定保持)
趣味:音楽鑑賞・ピアノ
小学校のときはマーチングで全国大会出場経験あり