SUNTORY CHALLENGED SPORTS PROJECT

#23 「苦しむことが競技の楽しさ。続けてさえいれば、きっと強くなれる。」

#23 「苦しむことが競技の楽しさ。続けてさえいれば、きっと強くなれる。」

バドミントン 佐藤 雅紀選手

「サントリーチャレンジド・アスリート奨励金」第2・3期対象選手

Q.競技を始めたきっかけは?

3歳の時、交通事故で右の太ももの半分から下を失い、今は義足で生活しています。中学時代は部活で、社会人になってからは地元チームで、野球をしていました。
 バドミントンはたまたま遊びで始めたものです。20歳の頃だったでしょうか、地元・仙台市の大会で声をかけられ、現在所属している「仙台ホデナズ・バドミントンクラブ」の立ち上げに加わりました。「ほでなす」という仙台の方言がチーム名の由来で、「小ばかでも人がいい」という意味。障がいのある人たちが中心となって活動しているチームです。

Q.佐藤選手にとって、バドミントンとは?

「生きがい」と言うと一般的な答え過ぎますか? 体育館にあったバドミントンの道具から偶然始まって、二十数年。ただ好きで、楽しくて、今まで続けてこられたのは、きっとバドミントンが私を呼んでいるからだと思っています。
 また、苦しむことが競技の楽しさでもあります。練習でよく取り組むのが、打ち方やステップなど、ほかの選手のプレーを「コピー」すること。すぐにできることもあれば、できるまでに3年かかったものもあります。それを困難だとは思わないけれど、できるようになると、やはりうれしいですよね。

Q.東日本大震災の時はどう過ごされていましたか?

勤め先は津波で流され、練習場だった体育館も半年以上使えなくなってしまいました。しかし、どうしても体がムズムズしてきて、仲間たちとはよく「早くバドミントンがしたいね」と話していました。
 復興の応援になればと、同じ宮城県の女川町で開催される大会にも時々出場しています。あちらでも選手が大勢亡くなりました。会場の体育館は震災後、避難所になっていた場所。近くには復興住宅が立っています。地元の方が大勢見に来て、試合中も「頑張って」と声をかけてくれるんです。

Q.夢、目標は?

目標はもちろん、バドミントンが正式種目に採用される2020年の東京パラリンピックです。そのためには、とにかく練習を欠かさないことでしょうか。
 日頃は県内あちこちの団体の練習場におじゃまして、練習試合をさせてもらっています。社会人選手だけでなく、小学生から70代の選手まで、どんな人とでも試合をします。一人でも多くの選手の「頭の中」をのぞくことで、プレーの幅が広がりますから。
 試合は仙台市全域から区ごとまで、いろんな規模で開催される健常者の大会を中心に、1カ月に2、3回程度、年間を通じて出場しています。義足の選手ということで対戦相手から心配されることもありましたが、こちらがバンバン打ち返して勝つものだから、今では「当たりたくない」と言われるようにもなりました。力を認められた証拠なので、うれしいことです。
 また、私が健常者の大会に出ることで、多くの人に障がい者バドミントンを知ってもらう機会にもなるはずです。障がいのある人でさえ、競技の存在はあまり知られていません。障がい者バドミントンの宣伝役となって、全国の大会を盛り上げたいと思います。

Q.読者の皆さんへメッセージをお願いします!

実は、「障がい者は健常者に勝ってはいけないのではないか」という思いから、競技に対して一歩引いていた時期もありました。チームに入ったばかりの頃は一番下手だったんですよ。そんな中、一番上手な選手が私とペアを組んで試合に出てくれました。自分が弱いせいでペアを組んでくれた選手は負けてしまう。それが悔しくて、申し訳なくて。そこから一生懸命練習をするようになりました。チームで一番下手だった私が必死に練習して、今では健常者の大会で勝つようにもなりました。続けてさえいれば、きっと強くなれます。
 一緒にバドミントンをやりましょう。ふれあいましょう。話をしましょう。試合は誰でも見られますし、見るだけでなく体験もしてほしい。練習には付き合います。対戦者も求む!勝負しましょう!

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佐藤 雅紀選手MASANORI SATO

「サントリーチャレンジド・アスリート奨励金」第2・3期対象選手

  • ●1976年3月14日生まれ

  • ●宮城県石巻市出身/宮城県仙台市在住

  • ●「仙台ホデナズ・バドミントンクラブ」部長

  • ●3歳のときに交通事故により右大腿2/1以上を切断し、右足太ももより義足となる。

  • ●18歳からは羽付きなどで遊んでいたが、同時期に障がい者体育館主催のバドミントン大会に誘われ好奇心で出場。仙台市ホデナズの創設者と出会う。

  • ●第24回日本障害者バドミントン選手権大会 シングルス4位・ダブルス2位(2014年12月)

  • ●第22回東北障害者バドミントン選手権大会in仙台 ダブルス1位(2015年7月)

  • ●第33回女川バドミントン大会 団体戦3位(2016年2月)

  • ●趣味は、魚釣りやバドミントンなど。

PASSION FOR CHALLENGE
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