SUNTORY CHALLENGED SPORTS PROJECT

#18 「周りにも楽しでもらうためにも、どんどん自分から楽しんでいく」

#18 「周りにも楽しでもらうためにも、どんどん自分から楽しんでいく」

車いすテニス 須田 恵美選手

サントリーチャレンジド・アスリート奨励金第1期・第3期対象

Q.競技との出会いは?

東日本大震災のちょうど1年前、2010年3月11日に交通事故で右太ももの半分から下を失いました。入院先にはテニスコートがあって、看護師さんたちがプレーしていました。事故前まで20年以上テニスをしていたし、車いすテニスのボランティアにも関わっていたので、「車いすテニスをやりたい」と思うようになりました。すぐに車いすテニスの知人に連絡を取り、夫には病院へラケットとボールを持ってきてもらいました。

Q.困難に直面し乗り越えた経験は?

実は、右足を失った当初は、あまり落ち込んでいませんでした。「じゃあ義足で歩けばいいじゃない。車いすテニスをやってみよう」と。でも、初めて義足を装着した時、太もものつけ根に樹脂製の部品が当たって血が出ました。入院した時は泣かなかったのに、あまりの痛さに涙が出ました。義足や車いすを使う生活のことがまだよく分からなくて、「これが普通のことなんだろうか」と少しだけ悩みました。経験者や先輩、サポートしてくれる人たちとコミュニケーションを取ってちゃんと聞くことが大事だなと思い、それからは疑問に思ったことは何でも聞いたり調べたりして納得するようにしています。
 車いすテニスにチャレンジする気持ちはいっぱいでしたが、やってみると車いすは前後にしか動かないから、ボールの動きにすぐ反応するのは難しい。なかなかうまくいきませんでした。以前一緒に練習していた友人が「お見舞い」と言いながら、毎日交代で練習に付き合ってくれて、すごく支えられました。

Q.日々大切にしていることは?

障がいがあることを「かわいそうだ」ととらえる考え方は、まだ根強いように感じます。それもあって、自分が楽しまないと周りの人にも楽しんでもらえない、だからどんどん自分から楽しむようにしようと意識しています。やりたくないことや苦手なことは、その中にある楽しい面を見つけるようにしています。

Q.夢、目標は?

大人の選手のほか、ジュニアの子どもたちにも車いすテニスの指導をしています。自分が教えている小3~中1の車いすジュニア選手たちの成長が楽しみ。いつか、東北大会を経て大きな大会に羽ばたいていってほしいです。選手としての目標は、5月にある国際テニス連盟(ITF)公認大会の「スーパーシリーズ」でベスト4に入りたいですね。さらにもうひとつ、今年は日本テニス協会B級審判員の資格取得にも挑戦します。入院中もラケットを持っているだけで、わくわくして仕方がありませんでした。テニスが楽しくて本当に好きです。まさにテニス人生!

Q.読者の皆さんへメッセージをお願いします!

車いすテニスを初めて教わった時、先生と私の通り道に段差があって車いすが上れないことがありました。その時、先生は通りがかった人に「すみません、手伝ってもらえませんか」と自然に声をかけていました。印象的でしたね。目からうろこ。「そうか、困ったときは声をかければいいんだ」って。声を発すること、だれかに声をかけることって、最初は勇気がいると思います。でも、あの時の先生の一言で、私も助かったし、助けてくれた人もニコニコしていました。お互いにいいことだと思います。声かけのコミュニケーションで、バリアフリーが広がっていけばいいと願っています。

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写真提供:本間正広

須田 恵美選手EMI SUDA

サントリーチャレンジド・アスリート奨励金第1期・第3期対象

  • ●1960年7月10日生まれ

  • ●宮城県富谷市出身/在住

  • ●2010年に交通事故により、右大腿部1/2欠損となるが、入院している病院にテニスコートがあり、リハビリを兼ねて車いすテニスを開始。元々テニスをしており、20年前から仙台で行われている『国際車いすテニス大会 仙台オープン』のスタッフボランティアなども行っていた。

  • ●北九州オープン(2016)では、シングルス:ベスト4/ダブルス:ベスト4

  • ●神戸オープン(2016)では、シングルス:ベスト8

  • ●ジャパンオープン(2016)シングルス セカンド準優勝

  • ●仙台オープン(2016)では、シングル:スベスト4/ダブルス:準優勝

  • ●大阪オープン(2016)では、シングルス:2R/ダブルス:準優勝

  • ●マスターズ(2016)では、リーグ3位

  • ●25年間にわたり、宮城県家庭婦人テニス連盟一般女性の大会を運営しているほか、健常の時に取得した「テニス指導員」「テニス審判員」の資格があり、今でもレッスンを行うなど幅広く活躍。大会運営のかたわら審判も行っている。

PASSION FOR CHALLENGE
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