水と生きる SUNTORY

  • 工場行こうファクトリップ
  • 品質への取り組み
  • ドリンクスマイル
  • サントリー食品オンラインストア 新しいウィンドウで開く
  • SUNTORY WELLNESS 自分に合うサプリメントを探してみよう! 新しいウィンドウで開く
  • サントリーの人と、働くリアルを伝えるメディア「SUNTORIAN VOICE」
  • 大阪・関西万博2025 サントリー万博特設サイト
2025.03.31

サントリー“君は未知数”基金2024採択団体訪問記/「トリナス」が目指す、持続可能な居場所の経営モデルをつくる民設民営の公民館

トリナスのスタッフの集合写真

“まちのコーディネート集団”として、静岡県焼津市で地域の居場所づくりをはじめ若者が参画するさまざまなプロジェクト創出を行う「一般社団法人トリナス」。多様な分野の人や組織をつなぐことで、複雑な地域課題を創造的に解決することを目指しています。「サントリー“君は未知数”基金」の採択事業で、2024年9月に若者の居場所および活動拠点として「みんなの公民館まる」を設立した同法人。居場所の運営や今後の展開について伺いました。

焼津駅前通り商店街をフィールドに取り組む「こども・若者が主役のまちづくり」

商店街の道路に人工芝を敷き詰めてみんなで遊び場をつくる「みんなのアソビバ」プロジェクト、一箱本棚オーナー制度を設け開館までのプロセスや運営にたくさんの市民が参画する「みんなの図書館さんかく」、商店街を舞台に月3万円を稼ぐビジネスプランをつくる「わたしの商店街クエスト」など、子どもや若者が主役のまちづくりに取り組んできた一般社団法人トリナス。JR焼津駅の南側に位置する焼津駅前通り商店街を拠点に、少子高齢化や子どもが抱える課題の多様化が進む地域社会のこれからを模索しています。

同法人代表理事の土肥潤也さんが、焼津駅前通り商店街の空き店舗を私設公共の若者の居場所「みんなの公民館まる(以下、「まる」)」にすると決め、物件を購入したのは2023年12月。「サントリー“君は未知数”基金」を活用し、まるの運営を通して“持続可能なこどもの居場所の経営モデル”をつくり広げることを目指しています。居場所の立ち上げにあたり、プロジェクトに共感した20名以上の中学生・高校生・大学生らと「まる準備会」を設立し、会議やワークショップを通じて居場所のコンセプトや空間の使い方、内装やロゴマークなど、たくさんの意見を集めアイデアを実現させました。

外部の建築士と一緒に行った内装を考えるワークショップの様子
外部の建築士と一緒に行った内装を考えるワークショップ
「みんなの公民館まる」の1階のラウンジスペースで“君は未知数”基金事務局メンバーと意見交換をする様子
「みんなの公民館まる」1階のラウンジスペースで“君は未知数”基金事務局メンバーと意見交換。入口にはカフェスペースもある
「みんなの公民館まる」のラウンジの小上がりスペース
ラウンジの小上がりスペースにはこたつが。ボードゲームや漫画も並んでいる
「みんなの公民館まる」の自習室
「みんなの公民館まる」の和室
2階の自習室や和室は、勉強や読書など静かに過ごしたい人が利用する
「みんなの公民館まる」のコワーキングスペースと会議室
コワーキングスペースや会議室は仕事や活動の拠点として使われる

社会参画が生み出す主体性と帰属意識

「10代・20代の人生のより道」をコンセプトとしたまるが開館し、現在までの5カ月間での累計来館者数は1,173人。平均すると1日に15人程度が遊びに来ていることになります。子ども・若者に向けた取り組みや居場所づくりについて、土肥さんは「意見反映と社会参画の両方が実現していくことが大切」と話します。

「いろいろな自治体の取り組みを見ていると、子どもや若者の声を聴くというところだけに焦点があたって、実際に子どもや若者を主役にした取り組みができていないケースもあると感じています。僕たちは場づくりを『場の開設プロセスへの参画』『場の運営プロセスへの参画』『自主的な活動への昇華』の3段階で考え進めてきました。まるの開設まで、建築士やデザイナーとのワークショップでは中高生がたくさんアイデアを出してくれましたし、施設の使い方を議論するチームもできました。オープンしてからはまるを利用する子たちの自発的な活動が生まれるようになり、参画の度合いが深くなってきています」

一般社団法人トリナス代表理事の土肥潤也さん

子どもの声を聴くだけでなく、子どもが自らの意見とともに行動し、社会になんらかの影響を与えるという経験が、その成長過程において大きな意味を持つと土肥さんは考えます。まるでは、イベントの企画運営への参画や、やりたい人が立ち上げる部活動など、子どもや若者が表現したいことを後押しする仕組みづくりが場の求心力を高め、幅広い年齢層の利用につながっています。現在、来館者のおよそ6割は小学生ですが、少しずつ中高生世代の割合が高まり、なにかを企画したい、やってみたいという目的での利用も増えてきたといいます。

また場づくりにおける意見の集め方については、将来的に他地域の子どもの居場所やユースセンターと連携した意見聴取の仕組みづくりも視野に入れ、目安箱やオープンミーティングのほか、試験的にオンラインプラットフォームを導入しています。匿名で参加できるオンラインプラットフォームは意見を気軽に投稿しやすく、居場所の必要性や商店街についてなど、テーマごとにさまざまなコメントが集まってきています。

「みんなの公民館まる」の壁に貼られた掲示物

地域連携がもたらす活動の広がりと持続性

「地域のこども・若者の居場所」として、そして「全国の若者の活動拠点」として。持続可能な居場所の運営や、子ども・若者に向けたさまざまな取り組みを支えるのは、地域との連携です。トリナスでは、まるの開設準備期間から地元の小中学校や高校などと支援し合える関係性を構築してきました。子どもたちとの関わりや地域とのつながりづくりなど、土肥さんとともに活動の基盤を築いてきた同法人の鈴木貫司さんは、地域からの承認や教育機関との連携について話しました。

「地域の小学校は1学年1〜2クラスという規模で、小学生が企画したイベントのチラシを教室に貼ってもらったり、先生をイベントに招待したりと、学校とつながりを持ちながら小学生に利用してもらっています。夏に開催した中高生向けの『わたしの商店街クエスト』では、商店街の方たちに協力いただきながら、大学生が伴走してまちの課題や魅力を見つけ、アイデアを発表しました。2020年にオープンした『みんなの図書館さんかく』もまるも商店街にあり、みなさんが受け入れてくださっているので、フィールドワークは子どもたちにとってハードルが低いものになっています。商店街という土壌があるありがたさをとても実感しています」

一般社団法人トリナス 鈴木貫司さん

隣駅にある静岡県立焼津中央高等学校とは、課外授業でまるや商店街での取り組みを紹介し、関係性が生まれました。まるの取り組みに興味を持つ生徒は多く、10代・20代が主体となりまるで開催されたマルシェイベント「すきま」には、同校将棋部による将棋さし体験や、有志生徒による海浜ゴミのアップサイクル雑貨の販売出店が参加し、つながりは授業の一環である探究学習支援に発展していきました。また私立の焼津高等学校と協働した高校生向け連続ワークショップ「さかさまクラス」は、参加した高校生にとっては達成感や自己肯定感が高まる経験となり、高校と地域の交流も生み出しました。

「さかさまクラス」の様子
高校生が自分の興味のあることを先生に教える「さかさまクラス」。高校生が3ヶ月かけて授業づくりに取り組み、授業当日は生徒となる高校教員のほか、授業を見学に来た地域の人など40人ほどが集まった

さらに法政大学や静岡大学、静岡県立大学とも連携し、ゼミ合宿の受け入れや地域と連携したプロジェクト型セミナーの実施、地域の中学校や高校への講師派遣やワークショップなども行う同法人。さまざまな活動の拠点としてまるを使うことで、遊びに来る小学生や中学生、高校生、そして大学生の交流が生まれ、新たな取り組みが自然発生的に生まれています。

まるに遊びに来る多様な子どもや若者との関わり方について、「スタッフが抱え込まない」「子どもをお客さまにしない」など、そのスタンスを語ってくれた鈴木さん。
「まるのオープンにあたり、スタッフで意識合わせのワークなどを行いました。子ども・若者の居場所を運営していくならば、まずスタッフである自分たちが健やかでいられる場所でないといけないと思っています。来館者はそれぞれの目的でここに来るし、時には深刻な話し合いが行われることもあります。そこでスタッフが抱え込まないような関わりをどうつくっていくか。また、お膳立てし過ぎたり交流を押し付けたりするのではなく、一人ひとりの距離感を尊重し、子ども・若者が主体的に参画できるような関係性をどうつくっていくか。この辺りのマインドセットはスタッフ間で共有するようにしています」

「みんなの公民館まる」について説明するスタッフたち
まるではスタッフや学生インターンが子どもたちの「やってみたい」をサポートする

全国に広げたい“持続可能なこどもの居場所の経営モデル”

トリナスの目指す“持続可能なこどもの居場所の経営モデル”は、焼津市のような人口規模5〜30万人の地方自治体で再現性のあるモデルです。同じくらいの規模感の自治体で普遍的に運用できるモデルが確立されれば、それぞれの地域に必要な子どもの居場所づくりに民間が取り組みやすくなります。まるの経営モデルでは、人口減少にともない、行政からの金銭的な支援が得られないケースを想定し、居場所の運営費用は個人や企業からの寄付を基本的な収入源としています。

まるでは、居場所に対する寄付とプログラムに対する寄付や協賛の2本の柱で年間の運営資金を賄う見通しです。個人からいただく寄付は、まるの活動の応援コミュニティである「まるまる団」と、子どもの居場所経営のノウハウを知りたい方に向けた「こどもの居場所 経営ラボ」の2種類のメンバーシップに棲み分けし、個人寄付の拡大や継続につながる仕組みづくりに取り組んでいます。寄付は地域とのつながりづくりの第一歩でもあります。まるの運営を地域に応援してもらうことで、「子どもや若者への取り組みに、地域の大人や企業にお金を出していただける文化をつくりたい」と土肥さんはいいました。

一方、企業に対しては、出資した企業へのメリットにもなる仕組みづくりとして、「みらジョブ」という職業体験プログラムの立ち上げを進めています。職業体験プログラムは子どもの居場所が地元の企業とつながる入口であり、まるの運営モデルをほかの地域で運用する際の最初のプログラムとして、どの地域でも展開できるようなプログラム設計をしています。

「中学から高校までの間に、子どもたちが地域の企業を知る機会があると、進路選択にあたり本当に自分に合う企業や興味のある方向性が選べるのではないかと思います。また、もともと市内の中学校が実施していた職業体験がコロナ禍でなくなっていたので、企業からも教育委員会からもニーズがあることがわかりました。企業に対しては、みらジョブへの協賛をきっかけに、子どもの居場所への継続的な支援にもつなげられればと考えています」

インタビューに答える鈴木貫司さんと土肥潤也さん

個人と企業からの寄付で運営費の土台をつくり、居場所の規模に合わせてさらなるプログラム開発や企業委託の受注で収入源をつくって自立運営していく。これがトリナスが構築する“持続可能なこどもの居場所の経営モデル”です。同法人では周辺自治体の高校生を対象とする事業を担うほか、コワーキングスペースやカフェの売り上げなども収入源となり、来年度から経営が黒字化する見通しを立てています。

子どもや若者はもちろん、地域にも企業にもポジティブな影響を及ぼす、民設民営の“持続可能なこどもの居場所の経営モデル”。この経営モデルを使って、全国でそれぞれのミッションに基づいた居場所ができていく未来を土肥さんは見据えています。

「今はまだ、持続可能な運営方法の仮説を立てて仕組みづくりを進めている段階です。まるが子どもたちを応援する場所だということをもっと認知してもらい、地域の大人がそれを支援するのが当たり前になるくらいの状況にしていきたいです。子どもを取り巻く環境は危機的な状況にあると思うので、『サントリー“君は未知数”基金』が民間企業の意識を変える契機になるといいと思っています」


【一般社団法人トリナス】
静岡県焼津市栄町3-3-33
090-6099-3313
https://torinasu.info/

みんなの公民館まる
静岡県焼津市栄町4-2-5
営業日・営業時間は公式インスタグラムにて告知
https://www.instagram.com/maru_kominkan/

みんなの図書館さんかく
静岡県焼津市栄町3-3-33
営業日・営業時間は公式WEBサイトにて告知
https://www.sancacu.com/