サントリー ワイン スクエア
シャトー ラグランジュの桜井楽生です。
サントリーがシャトー ラグランジュの経営権を取得したのは1983年12月。当時、ラグランジュが荒廃しており半分以上の畑が耕作放棄されていたのは有名な話ですが、畑だけでなく建物も管理が行き届いておらず荒廃していました。シャトーにおいては、棟の上部は雷で焼け、本館は雨漏りをしていたそうです。
1985年より再建のための本格的な工事が始まりました。広大なぶどう園を再整備し、2年間で約60ha、50万本以上の苗を植えました。シャトーは床や天井を含めて内装を全てやり直し、醸造棟は設備を最新のものに一新。樽熟成庫は3年かけて建設。事務所等も新たに建設しました。工事は1990年までかかったと聞いています。
私がラグランジュへ赴任したのは2020年でした。買収後の大規模工事から凡そ30年が経過し、さすがに建物、庭園、道路等、いたるところで改修が必要な時期となっていました。コロナ禍でお客様の来訪が少なかったこともあり、2021年から再び大規模な工事に着手しました。
全ての建物は壁を磨き直し、テイスティングルームは内装を一新。醸造棟は古い建物はそのままに内装を大きくリフレッシュし、合わせていくつかの生産設備を入れ替えました。道路、森、シャトー周りのテラスや庭も再整備しました。事務所だった場所は従業員向け食堂となり、倉庫だった場所が新しい事務所になりました。そして、最後は池の清掃を行い、4年に及んだ工事がようやく終わりました。
サンジュリアン村の最高標高の丘を有するラグランジュは、メドックの典型とも言える氷河期由来の砂利質の畑が多く存在し、誰が見てもこの土地とカベルネ・ソーヴィニョンの相性は抜群です。しかし、買収時に残っていた畑にはカベルネよりもメルロが多く植えられていました。1985、1986年に鈴田たちが新たに植えたカベルネ・ソーヴィニョンは、いよいよ樹齢40年を迎えようとしています。私たちは今、ラグランジュのテロワールのポテンシャルをいかんなく発揮したワインをつくる事が出来る時代に、いよいよ突入しつつあります。
ラグランジュの歴史を振り返ると、前オーナーのセンドーヤ家がラグランジュを取得したのが1925年。そのすぐ後に世界恐慌が訪れ、ラグランジュは衰退の道を歩み始めました。そう考えると、今私たちの目の前には、この100年誰も見たことがなかった歴史上もっとも偉大なラグランジュを生み出せる条件がいよいよ揃ったのだと思います。これからのラグランジュの品質に益々注目いただけますと嬉しいです。
最後になりますが、2005年から20年続いたシャトー ラグランジュ便りは、2024年12月をもって終了させていただくことになりました。現在、シャトー ラグランジュの各種情報は、Instagram、Facebook、LinkedInにてより頻繁に発信しておりますので、今後もぜひそれらをご覧いただけますと幸いです。長らくご愛読いただきましたこと、厚く御礼申し上げます。今後とも、シャトー ラグランジュをどうぞ宜しくお願いします。
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桜井楽生(さくらいらくさ)
登美の丘ワイナリー醸造責任者(2009~2012)、ボルドー大学研究員(2012~2015)、ワイン生産研究本部課長を経て、2020年よりシャトー ラグランジュ駐在。2022年より副社長。ワイン醸造技術管理士(エノログ)
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