サントリー ワイン スクエア
シャトー ラグランジュの桜井楽生です。
いよいよ本日より、カベルネ・ソーヴィニョンの収穫が本格的に始まりました。
今年の日本は大変暑かったと聞いていますが、今年はボルドーでも、気温は高めで推移しました。一方降雨は、6、7月は例年よりやや多かったものの、全体を見れば少雨の年でした。
日本で、「ボルドーがベト病発生で苦しんでいる」というニュースが流れていたようですが、高温と湿度の影響によって、確かに一部地域ではベト病による大きな被害が出ています。2023年は、ボルドー全体としては収穫量が大幅に減るだろうと言われています。
そのような中、私たちのいるサンジュリアン、近隣のポーイヤック、サンテステーフといった特にメドック北部では、大きな被害は出ていません。これらの地域では、むしろ今年は例年と比べて収穫量が多くなるでしょう。
ラグランジュでは、メルロの収穫を9月13日から20日に行いました。多くのシャトーがメルロに続いてカベルネ・ソーヴィニョンの収穫をどんどんと進める中、私たちは若木やセカンドワインの区画の一部をゆっくりと、ゆっくりと収穫しながら・・・カベルネ・ソーヴィニョンの完熟を待ちました。
分析値を見ればとっくに収穫適期に入っているのですが、私たちが畑でぶどうを食べて回ると、まだ味わいが足りないと感じたのです。過去の経験から、「もう数日待つことで、もっと良くなるに違いない」と信じて、私たちは待ちました。
先週金曜日(9/29)時点では、「まだ適期ではない」と判断しました。すでに、近隣の格付けシャトーでは、カベルネ・ソーヴィニョンの収穫を終えているところもあります。しかし私たちは、最上級の区画を中心とした50ha超の畑は収穫をせず、我慢しました。土日は最高気温30℃を超える晴天。そして、週が明けた月曜日(10/2)、ぶどうの味わいに大きな変化がありました。「今だ!」と現場が一体となり、一気にアクセルを踏んで本日から最上級の区画の収穫を始めました。
収穫を待っている間、病気のリスクは高まりました。収穫量が減るリスクもありました。しかし、迷いはありませんでした。ラグランジュでは最後は必ず品質最優先で判断をします。買収当時、佐治敬三が指示したたった一つのこと。「このテロワールから最高のワインつくれ」この言葉を胸に、リスクを取ってでも最高品質を目指し続けるのが私たちの信念です。
今年の収穫初日、現場へ行ってみると、従業員たちがお揃いのポロシャツを着ていました。その背中には、「40 ans d'une vision tournée vers l'excellence – La philosophie Suntory」)(秀逸さの追求という40年間不変のビジョン – サントリー精神)と書かれていました。実は、このポロシャツをつくっていることを、私は全く知らされていませんでした。これを現場でみた時、従業員たちがサントリーの品質最優先の精神に共感し、誇りを持って仕事をしてくれていることを改めて感じることができ、大変嬉しかったです。私は常々、品質の最後の要は、働く人たちのプロとしての誇り、技能、そして想いだと思っています。彼らがワインづくりのプロとしての矜持をもち、その力を発揮してくれることが、今後のさらなる品質向上につながるのです。
2023年のシャトーラグランジュは、私たちの過去から積み上げた経験と、全従業員の想いを込めた、傑作になるに違いないと信じています。
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桜井楽生(さくらいらくさ)
登美の丘ワイナリー醸造責任者(2009~2012)、ボルドー大学研究員(2012~2015)、ワイン生産研究本部課長を経て、2020年よりシャトー ラグランジュ駐在。2022年より副社長。ワイン醸造技術管理士(エノログ)