サントリー ワイン スクエア
6月のワイナリー便りにて、ラグランジュのプリマー開始をご報告しました。その後、上級シャトーが互いの動きを牽制し合い、一級のオファーは6月末までずれ込む異例のプリマーとなりましたが、予想通り、二級、一級シャトーとヒートアップし、マルゴー、ラトゥールに至っては何と350ユーロ(前年90-120ユーロ)、ラフィット、ムートンも300ユーロ(前年80ユーロ)という信じがたい価格となりました。6/27時点でのプリマー平均上昇率は前年比58%(グランクリュのみでは65%)に達し、終わってみれば71%上昇のラグランジュも、パーカーノート(※1)の高評価を考慮すれば慎ましい上昇率であったことが判明しました。もちろんラグランジュのワインは投機対象のワインではなく、あくまで愛好家の皆様に飲んで喜んでいただくためのワインですので、われわれメンバー一同は今回の結果には大変満足しています。
さて、その熱い余韻は6月末のボルドーでの各種イベントに持ち込まれました。まず、6/26-7/2に開催されたボルドーワイン祭りには延べ35万人が訪問したとのことです。ボルドーと姉妹都市となっている福岡市も招待され、各種イベントが組まれたことから、日本からの訪問者もかなりの数に昇ったようです。私は、コマンダリー・デュ・ヴァン・ド・ボルドー(※2)主催の大きなイベントが続いたため、ワイン祭りは観に行けませんでしたが、期間中にフランスがブラジルを撃破するというビッグニュースもあったため、会場はたいへんな熱気に包まれたようです。
今回は、私が参席した二つのイベントについての報告です。
一つ目は、6/28夜にシャトー・ジスクールで催された、コマンダリー・デュ・ヴァン・ド・ボルドー世界大会最終日のガラディナーです。これは4年に一回、世界各地のコマンダリー(67箇所)代表者が集まる大会で、今回で4回目を数えます。今回は世界各地より200名のコマンダリーが招待され、日本からも大阪コマンダリーから2名が参席しました。シャトー・ジスクールでのガラディナーは、食事、ワインとも世界大会に相応しいすばらしいものでした。この余韻が冷めやらぬ翌々日の6/30夜には、メドック、グラーヴ、ソーテルヌで構成されるコマンダリー・デュ・ボンタン主催の花祭りがボルドーの市内にて執り行われました。これは、ボンタン会が年4回主催する晩餐会の中で最も格調高いもので、正装にて行われる晩餐会です。今年も1,200人を超える参加者で賑わいました。この花祭りの冒頭に各シャトーに推薦されたボンタン会名誉会員の就任式が行われ、壇上ではコマンダリー正会員がローブを着て名誉会員の入会を祝うのですが、夕方19時でも30度を超える暑さで、今年よりボンタン正会員として初めてローブを着た私も汗だくになってしまいました。コマンダリー正会員が壇上で並ぶ様子を『ペンギンの行列』と揶揄されるのですが、まさに今年は暑さに声も出なくなったペンギンのようでした。
歴史的なプリマー、そしてサッカーでのフランスの快進撃、の熱い余韻の中で、ボルドーは暑い7月を迎え、いよいよヴィンテージ2006も生育の盛りを迎えつつあります。春先の萌芽の遅れを完全に取り戻し、開花以後の暑さと乾燥により、ぶどうの生育はほぼ昨年並みとなってきています。夏場、そして秋の天候を前に今年の話はまだ時期尚早ですが、この熱い余韻が収穫時期まで続くことを期待したいものです。
椎名敬一
ぶどう栽培研究室、ガイゼンハイム大学留学、ロバート・ヴァイル醸造所勤務、ワイン研究室、原料部、ワイン生産部課長を経て、2004年6月よりシャトー ラグランジュ副社長。2005年3月より同シャトー副会長。