今回の料理は、鯖のトマト煮パスタです。鯖は涼しくなってくると美味しくなる魚です。昨年のしめサバ 菊花と大根の柚子こしょう風味の甘酢あえの記事の時に「鯖は日本の魚種別の漁獲量でNo.1(※1)で、ここ数年間は連続の首位です」と書きました。今年、2017年のデータ(※2)が農林水産省から公表され、10年連続でトップを堅持した事が判りました。驚くべきは2位以下の顔ぶれの変化です。10年前の2008年の2位は秋刀魚で、3位は片口鰯でした。翌2009年から、片口鰯が2位、3位が帆立貝という年が2年続きます。2011年から鯖、帆立貝、鰹の順になり2015年から真鰯が2位になります。なんと真鰯は2008年には3万5千トンで10位だったのが、順調に数字を伸ばして2017年には50万トンを超えて14倍にもなっているのです。一方、秋刀魚や鮭、スルメイカはこの4年間で、いずれも半減以下になっています。大規模な魚種交代が起こっているのかもしれませんね。この、秋に美味しい鯖を今回はトマト煮にしてパスタで頂きます。パスタの起源には諸説あります。パスタ=pastaはイタリアにおいては、いろいろな意味を持っています。「麺類」というような細長く伸ばした穀類を指している場合もありますし、同じラテン語から派生したと考えられる英語のペースト=pasteやフランス語のパテ=pate というような「練ったもの」を指している場合もあります。人類最初の作物は1万年以上前の、大麦やエンマーコムギ、ヒトツブコムギであったと言われています。大麦は押し麦のようにすれば粒食が可能ですが、小麦の仲間は粉にして、焼くか煮るかしないと食べる事が出来ません。当然「練る」工程が発生するはずです。なので、長く伸ばしたかどうか別にして、パスタは小麦の農耕が始まった時から存在していたと考えられます。そして、その場所は中央アジアから東ヨーロッパのエリアであったと思われます。
この鯖のトマト煮パスタにテイスティングメンバーが選んだイチオシワインはカザマッタ ロッソでした。カザマッタは、天才醸造家の呼び声が高いビービー グラーツ氏のイタリアワインで、トスカーナで醸造されています。ビービーは芸術家一家に生まれました。家はフィレンツェから車で5、6分のヴィンチリアータの高台にあります。彼は家族で楽しむためだけに使われていたぶどう畑のぶどうで、2000年から本格的にワインづくりを始めました。そして2004年のVinexpoではイタリアソムリエ協会が選ぶ「ベスト プロデューサー賞」の最終候補者の3人のうちの1人に選ばれました。2000年から2004年ですから、たった5年です。言ってみれば、たった5回のワインづくりで、ほとんど頂点とも言えるところまで行ったのです!!やはり天才なのですね。最近では有機栽培の区画を増やしてナチュラルなワインづくりを目指しています。このカザマッタ ロッソはサンジョヴェーゼ100%で醸されます。グラスに注ぐと、美しいルビー色です。ドライチェリー、ブルーベリー、スパイスを思わせる香りがあります。タンニンは柔らかで、まさに美しくエレガントなサンジョヴェーゼの個性を、見事に表現したワインだと思います。
鯖のトマト煮パスタと合わせると、鯖の独特な、身のコクが、生き生きと感じられました。
「鯖の味わいが素直に広がって、とても心地良いです」
「良く乗った脂とタンニン分が溶け合って甘く感じます」
「青魚の風味とサンジョヴェーゼは、常に高い評価ですよね、ある意味、鉄板の組み合わせなのかもしれません」
「やっぱり、イタリアワインだからでしょうかね、トマトとオリーブオイルとの相性がとても良いです」
「ソースの黒オリーブの風味の風味とカザマッタの香りとが、ピタリとマッチしています」
パスタを家で作るとき、ついミートソースとか、定番になりがちではないでしょうか?一度、鯖のトマト煮を思い出してください。そしてカザマッタ ロッソとの素晴らしい相性をお試しください。
(※1)農林水産省 平成27年漁業・養殖業生産統計
(※2)農林水産省 平成29年漁業・養殖業生産統計