尺取虫が体を縮めたり伸ばしたりしながら前へ進む姿を見ていたら、ふと祖母が縫い物の際に指を広げたり縮めたりして寸法を計っていたのを思い出した。昔は体が物指しだった。この頃は何でも巻尺で便利だが、身体感覚が生活から失われていくような気がする。料理でも、いちいち計量スプーンや秤で計るあの正確さは男にはどうも馴染めない。塩なんかぱっとつまんでぱっと入れる。何でも目分量だからあなたはいい加減なのよと反撃されそうだが、三本指のひとつまみと二本指のひとつまみ位はちゃんと使い分けて加減しているのだ。もともと「いい加減」は悪い意味ではないのだから。さてこのグラスの山崎はシングルかダブルか、奥方が目で計っている。
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