グラスの氷を見つめていたら急に流水を見に行きたくなった。網走や紋別の沖合に姿を現す流氷初日が、今年は少し早そうだという。十一月中旬にシベリア付近の海で生まれた氷が、海流と季節風にのって、ゆっくり千キロの旅をしながら大きな流氷帯に育ち、二ヶ月がかりで流れ着くわけだ。広さ一五三万平方キロのオホーツク海の八〇%が氷に覆われるというからスケールの大きさにも驚かされる。海水は普通塩分が三・五%で、氷点下一・八度以下にならないと凍らないが、オホーツク海は他の海に比べ三・二%と塩分が少ないので凍りやすいのだそうである。グラスの氷は鳴らしていたら、ギシギシと重くきしむような流氷鳴りが遠く聞こえたような気がした。
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