今年の夏は恐竜がやけに元気だった。それもお馴染みブロントサウルスとかディプロドクスみたいなデカいのでなく、時速数十キロで走るような小さく身の軽い連中が活躍したようだ。今や恐竜はのろまな冷血の爬虫類ではなく、哺乳類などと同じ恒温動物だったという説がもっぱらだそうで、集団生活を営み、子育てもうまく、結構過保護でと、恐竜像もここ数年で随分変わった。それにしてもなぜ人はこんなに恐竜に心を奪われるのだろう。人間の心の奥深くに恐竜時代の記憶が今なお残っているからなのか。恐竜が生きた時代は一億五千万年にも及ぶが、人類の歴史は僅か四万年。その四万年の端っこの黄昏時に、山崎のグラスを手にした男が一人佇んでいる。
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