二月になると、熱海に行ってみたくなる。本物の梅もぼつぼつで、勿論それもあるのだが、お目当ては国宝光琳の紅白梅図屏風。毎年二月の一ヶ月間だけ公開される。暮の紅白が終わると、今度はこちらの紅白というわけだ。金地の大画面を紋様化された流水が末広がりに分断する大胆な構図の、左に年輪重ねた老白梅、右には若々しく枝を天に伸ばす紅海。尾形光琳最晩年の作というこの屏風、今なお新しさを感じさせる。光琳は大きな呉服屋の倅で、随分贅沢の好きな人だったというが、それにしてもこの絶爛たる金色世界の豊饒なこと。無論この前で梅見酒とは参らぬが、宿に帰り、今し方目に焼き付けたイメージの香り肴に、湯上りのグラスを花咲かせるのも一興。
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