まもなく京都は祇園会である。一日の吉符入りに始まって延々一ト月に及ぶ長いお祭りの、ほぼ真ん中の十六日が宵山。そして十七日には山鉾が出る。こんちきちんの祇園囃子で、稚児の乗る長刀鉾を先頭に、三十程ある山鉾が大行列の人波に取り巻かれて巡行する様はまさに夏祭のクライマックス。ところで、この季節になるとこんな話を思い出す。ある時何トンもある山車が何かの拍子に動かなくなった。何十人で押せども引けどもビクともしない。ところが諦めてみんなが手を放したら、途端に車は勝手に動き始めたというのである。こういう大逆転はいつ聞いても嬉しい。頭が柔らかく、酒が旨くなる。山崎のグラスの氷も、こんこんちきちん、機嫌よろしい。
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