水清ければ魚棲まずというが鮎は清い水に棲むから、流れの底に目をこらすと、岩から岩へひらりと身をひるがえす鮎の姿を見かけることがある。よく見ると二米四方ほどの所を、飽きもせずぐるぐる回っているが、あれは苔を食っているのだそうだ。岩の上を旋回しながら、さっと顎で上手に削り取る。一分間に約20回、一日10時間これを繰り返すというから、中々見かけによらぬ大食漢ではある。そこで釣人の間では、鮎を釣るには石を釣れというらしい。鮎がいると、川の石に微かな食みあとが残る。釣人はそれを見逃さず、その大小多少で魚の大小多少を知るのであろう。さて私は、跡を残さぬよう冷蔵庫で何か見つけて、ピュアモルトのグラスの上をひと巡り。
|