引っ越しの季節である。三月と四月に、年間の四割が集中するという。入学、入社、転勤。新しい生活へと踏み出してゆく人の前途を祝し、うまいピュアモルトの封を切ろうと思う。ところで、四月に学年が始まるのは、世界的には小数派である。九月もしくは十月入学を採っている国が百か国以上。漱石の「三四郎」にも出てくるように、日本の大学も明治時代には九月入学だった。国際化に対応して、日本も再び九月入学を採用してはどうかという意見がある。これに対し、桜の咲くこの季節に人生の転機を迎えたい、という感情で反対する人が多いのだが、学生にとっては、九月新学期の明らかなメリットがひとつある。夏休みの宿題がなくなる、ということだ。
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