いまごろは、毎日二分ずつの勢いで昼が長くなっているそうだ。暖かさはまだ落ち着かず、ちょくちょく寒の戻りがあって安心できないのだが、日の光はもう一直線に春へと差しかかっている。歳時記をめくると、春の季節に「亀鳴く」とある。亀が鳴くものか調べてみると、田や川の中から鼻先だけ出し、水をふくんで呼吸するときに音を発するのだ、という説があった。本当だろうか。ともあれ、光が満ちてきて、あちこちで生きものが蠢きはじめると、きっと亀も喜びの声をあげずにはいられない気分だろう。気持ちのよい週末の午後、日が傾くのも待てずに、とっておきのピュアモルトをグラスに注ぎこむこの音も、まさに謳っているとしか思えない。
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