晩秋のおだやかな日に、クモが空に浮かんでいるのを見かけることがある。雲ではない、虫の蜘蛛である。長く伸ばした糸を風船がわりに、上昇気流をうけて、草の先からふわりと舞い上がっていく。フランスではこれを聖母の衣のほつれた糸に見立てて「聖女の糸」と呼んだという。日本の東北地方では、こらが見られると、もうすぐ雪の季節がやってくるというので「雪迎え」 と呼んでいる。まだ暖かさの残るうちに、来るべき寒さを迎えるそなえをしたのだろう。柔らかな日差しの陰で、朝晩の冷気は確かに冬のものへと向かっている。こんな季節には、まだ明るさの残るうちにピュアモルトのボトルを取り出し、長い夜を迎える支度をととのえるのがよい。
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