網戸のむこうから聞こえてくる鈴虫の音色。語りかけるような懐かしい声に思わず耳を奪われてしまうことがある。ところで、同じ虫の声を聞いても、日本と西欧の人とでは聞こえ方が違うのだそうだ。虫の鳴き声を、言語脳といわれる左脳で聞き「声」としてうけとるのが日本人。音楽脳といわれる右脳で「音」として聞くのが西欧人。この違いは先天的なものではなくて、生まれ育った言葉が日本語かどうか、によって左右されるのでという。そういえばピュアモルトを傾けていてふと気になった。手にしたグラスの中で氷がチリリと鳴るその音が、言葉に聞こえるのだ。「おつかれさま」。日本に生まれ育ったウイスキーが語りかけてくる、声なのだろうか。
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