入道雲が浮かぶと、目に浮かぶ。蝉しぐれの午後、縁側で頬張った西瓜の、まさに甘露。これこそ日本の夏の風物、和の涼味と思っていたら、西瓜のふるさとは熱帯アフリカ地方なのだそうだ。皮が青いのに中身が赤く、怖がる人もいて、わが国では初め人気がなかった。明治・大正の頃品種改良が行われ、日本の味覚をつけて、あのタテ縞は人々にひろく愛されるようになったという。歴史のなかでは、つい最近の出来事である。ところで、少年時代は遠くなり、近頃の私はもう一つ甘露を知っている。ロックで飲る。夏の夕べのピュアモルト。ウォーターメロンが西瓜になったように、日本人が日本の風土で育んだこの一杯は、すでに和の妙味そのものである。
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