豆腐は、よい大豆と、よい水と、もう一つ大事なのが石臼の石の質といわれた。今では余り関係のない話かも知れない。と思うと、豆腐食いとしてはちょいと寂しくなる。江戸時代には、豆腐百珍という豆腐料理ばかり二百三十八も集めた本がベストセラーになったが、やっぱり夏は冷奴だろう。これをやっこと呼ぶようになったのは、槍持奴の服の紋所が白い四角だったかららしい。ちなみに田楽は、昔田楽法師という一本足の竹馬で踊る舞狂言の一種があって、その姿が似ているところから豆腐田楽の名が生まれたという。どちらも視覚的なのが面白い。さて、ガラス鉢、醤油の小皿、冷蔵庫でよく冷やし、冷たい奴を肴に山崎を飲る。夏の休日のささやかな楽しみ。
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