先月のこの欄で、あの懐かしい鰹節削り器を近頃は余り見かけなくなった、オカカの味つまり母の味が失われつつあるのは残念であると申しあげたら、削節も立派なオカカの味、母の味ではないかというご指摘をいただいた。現在の削節はちゃんとした鰹枯節が使用され、鰹節箱で削ったあの風味を損なわぬよう気密容器に入れ、また不活性ガスを充
するなど、さまざまな努力が払われている。誤解を招くような表現があったことを率直にお詫びしなければと思った。鰹節削節の生涯は、十年毎に一万トンづつ増えているのだそうである。たっぷりオカカを振り掛けた冷奴など肴に、失われつつあるどころか、いよいよ健在であるオカカの味、母の味に乾杯したい。