新しい鰹節の表面に、いつもうっすらと黴が生えていたのを憶えているけど、あの黴のお陰で鰹節が芯まで乾燥し、長いこと保存できると聞いた。しかし今では、黴の生えた鰹節を売っている店は少ない。背の部分を背節または雄節。腹の部分を腹節あるいは雌節。小振りの鰹は片身をそっくり使い、形が亀に似ているので亀節という。そのせいかどうか昔は婚礼の引き出物によく使われた鰹節も、近頃はさっぱり見かけなくなった。日本の家庭の台所からあのカンナを仕込んだ鰹節箱が姿を消して久しいが、つまりこれはオカカの味、母の味が失われつつあるということ。一方で、父の味ともいうべきピュアモルトが最近元気なだけに、これは何とかしたい問題である。
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