今ではいろは育ちの方が少なくなってきたが、あいうえお育ちでも、いろはかるたは子供の頃随分遊んだ。「犬も歩けば棒にあたる」という、あの犬棒かるたは江戸のいろはで、「一寸さきやみの夜」にはじまるのが京・大坂の上方いろは。江戸いろはができたのは文化年間というから、上方いろはの方がずっと先輩だったらしいのだが、面白いことに上方かるたには、無駄を戒める諺がこれでもかという風にあれこれ入っていて、「豆腐にかすがい」「ぬかに釘」「闇に鉄砲」「猫に小判」「馬の耳に念仏」「二階から目薬」「縁の下の舞」といった具合。なるほど気風というのはこんな所にも出てくるものだなと感心しつつ、ついでにグラスの方もお手付き三回。
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