気に入ったものを見ると人間の瞳は大きくなるという。嘘をついてもすぐ判ってしまう。トルコ人は絨毯を売る時、瞳を見て相手がその気かどうか判断したのだそうである。嬉しいと瞳孔が開き、奥の水晶体が光を反射して、目がきらきらと輝く。だから喜びは人を美しくする。中性のイタリアの女性は自分を美しく見せるために、ベラドンナの葉の汁を点眼して瞳を拡大させたというから、涙ぐましいような努力だが、瞳の大きな女性が好きという男性は確かに多い。ところで今の私の瞳はそれこそ目一杯開き切っているのではないかしら。何しろ目の前で、琥珀色のピュアモルトがグラス越しにこちらに微笑みかけているのである。これには目がないのですよ。
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