幸田露伴の随筆を読んでいたら、たまたま漢詩に「釣女」の二字を見つけた露伴が「甚だ珍しく奇なり」と書いている件りがあって、なるほど、そういえば釣人に女性を見かけることはきわめて少ない。アイザック・ウォルトンの「釣魚大全」に「釣は無為に過ごさぬ無為な時の仕事」という言葉が出てくるが、限りなく無為に近く、無目的であるからこそ、釣は男を夢中にさせるのだろう。こんなことを言うと、世の女性軍からお叱りの言葉を頂戴しそうだが、こういう楽しみは、やっぱり男のものかもしれない。あ、それともう一つ、毛針など拵えつつ、空になったグラスにもう一杯ピュアモルトを注ぐ愉しみ。勿論これも、男に生まれてよかったと思える愉しみ。
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