「私は、楽譜に書かれた音符を忠実に再現する」とトスカニーニがいった時、フルトヴァングラーは「私は、その楽譜の裏に隠されている音符をさがして演奏するのです」と応えたという。この台詞には、地下のバッハやベートーベンも大きな拍手を贈ったに違いない。こういう言葉は、ウイスキーみたいに心地良く体に浸み込む。フルトヴァングラーはベートーベンをこよなく愛した。そのベートーベンの「第九」が、今日もまた街に流れている。ちなみに昨年一年で「第九」は170回も演奏された。そのうち144回は12月の演奏だそうである。なんだか「第九」を聴かないと、今年が終わらない。「山崎」の静かに響くグラスに触れないと一日が終わらないように。
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